骨盤矯正でダイエットできる?出産後は骨盤矯正をするべき?

ダイエットの方法はいろいろありますが、他力本願で骨盤矯正をしてもらうというのも1つの手です。街中の整体院や整骨院の中には、骨盤矯正でダイエットができるとか、出産後の体型が戻りやすくなるなどと宣伝しているお店もあります。はたして、本当にそのようなことが可能なのかを検証します。

最近は美容整体をおこなっている整体院だけでなく、整骨院でも骨盤矯正をおこなっているお店が増えていきています。骨盤矯正で腰痛の改善を試みることはともかく、骨盤矯正で痩せたり、痩せやすくなったりすることは可能なのでしょうか。今回の記事では、骨盤に着目することで、骨盤矯正の本当の効果について紹介します。

福本 晋平
この記事の監修者
ふくもと治療院院長
ふくもと治療院院長 健康を考えることは、自分自身を見直すことです。それには、正しい情報と実践が必要不可欠です。 今は情報が氾濫しています。身体にとって間違ったことをしていると必ず悪化します。 これまで多くの患者さんがその方に合っていないこと、間違った方法を実践され、適切に取り組めていないのが現状です。3000年以上脈々を受け継がれている東洋医学には日常の生活から身体を改善するノウハウがたくさん詰まっています。東洋医学の教えや、私自身の治療経験を元に皆様に分かりやすく、正しく、実践に基づいた情報を提供します。 日本においても私たちのような東洋医学は、日本人の持つ繊細さや高い感性により独自の発展を遂げてきました。日本においてはあまり馴染みのない医学ですが、ヨーロッパ、アメリカ、韓国、中国などでは国の医療機関で行われています。一人でも多く自国の持つ素晴らしい伝統的な治療を受けて頂きたいと願っています。 困っておられる症状を、患者さんと一緒に改善していくことで感謝される。私自身何物にも代えられない大きな喜びです。 一人で悩まずにお困りのことをぜひご相談下さい。一緒に治療していきましょう。私も、皆様の健康の為に日々治療技術を高め、精進していきます。
コメント全文を表示

骨盤矯正とは?

太もものマッサージを受けている女性

街中の整体院や整骨院の看板などに「骨盤矯正」と書かれていることがありますが、そもそも骨盤矯正とは何を意味しているのでしょうか。

骨盤の位置を元に戻す施術のこと

骨盤矯正とは何かを一言で説明するのであれば、「骨盤を正しい位置に戻すこと」となります。なんらかの原因で正常な位置ではなくなった骨盤を本来あるべき位置に戻すことで、さまざまな不都合の解消を目指します。

骨盤がゆがむ原因

骨盤矯正をなぜおこなうかというと、骨盤がゆがんでしまうからだとされています。では、骨盤がゆがむ原因についてはどのように説明されているのでしょうか。

一般的な整体院や整骨院のホームページなどを見てみると、骨盤がゆがんでしまう原因として「デスクワークによる不良姿勢」「足を組むこと」「片側でばかり荷物を持つこと」「妊娠・出産」などがあげられています。

骨盤矯正のウソ

体の前で手を交差させてばってんを作っているピンク色の服を着た女性

骨盤矯正にもちゃんとした効果はあるのですが、一般的な骨盤矯正の多くが、医学的な根拠のない説明に基づいておこなわれています。では、骨盤矯正にはどのような問題点があるのでしょう。

骨盤はゆがまない

骨盤矯正をおこなう前提として、骨盤がゆがんでいる必要があります。ところが、医学的に見て骨盤がゆがむなどということはあり得ないのです。

骨盤とは、いくつかの骨が靱帯によって強固に結合されてできている部分のことを指します。身体の上半身と下半身とを結ぶ大事な場所にあるので、よほど強い外力が加わるなどしない限り、ゆがんでしまうようなことはありません。

ましてや、手で押したり引いたり、機械で牽引したところでビクともするものではありません。整体院や整骨院を選ぶときには、骨盤がゆがむことはないという事実を理解しているお店を選びましょう。

骨盤矯正で上がるのは新陳代謝

骨盤矯正の効果として、代謝が向上して痩せられるなどと説明されることがありますが、これに関してはまったくのウソ、もしくは誤解です。

骨盤矯正をおこなう際には、その準備段階として筋肉を緩めるのが一般的です。筋肉をゆるめると血行がよくなるので、新陳代謝は向上します。

ただ、痩せるためには基礎代謝や活動代謝をあげる必要があります。ベッドに寝て施術を受けているだけで基礎代謝や活動代謝が上がるわけありませんよね。上がるとしたら、それは施術をしている人の方です。

脚長差は誤差の範囲

脚長差は「きゃくちょうさ」と読みます。整体院や整骨院などで骨盤矯正をおこなう場合、左右の脚の長さを比べたりします。それによって、骨盤のこちら側が下がっているからですよ、などと説明されるようなことがあります。

足をもってかかとをくっつけ、施術の前と後で改善状態を分かりやすく説明するためにおこなわれるのですが、足の長さが左右で数cmも変わる訳がありません。

先天的に足の長さの異なる疾患を持って生まれてくる人はいますが、普通に歩行できている人の足の長さが左右で数cmも異なることはあり得ないのです。もっと穿った見方をすれば、足の揃え方など施術者のさじ加減一つです。

産後の骨盤矯正の真実

赤ちゃんにキスをする母

出産後、半年くらいまでに骨盤矯正をおこなうと、妊娠時に増えた体重が元に戻りやすくなったり、体型が元に戻りやすくなったりすると言われています。本当にそんなことがあるのでしょうか。

疼痛の緩和が目的

産後の骨盤矯正の本来の目的は、出産や産後の育児によって受けたダメージを、回復しやすくすることにあります。

女性にとって出産は人生の一大イベントですし、産んだらそこで終わりではありません。むしろ、そこからが身体にとって大変な時期の始まりなのです。

出産後数ヶ月は、熟睡することもままならない日常が始まります。睡眠は身体を回復させるための時間なので、睡眠の質が低下することで、身体の回復機能も低下してしまうのです。

骨盤の中央には仙骨という骨がありますが。仙骨からは副交感神経支配の神経が出ています。そのため、骨盤周囲の筋肉が緊張することで、副交感神経の働きが弱まり、さらに回復力が低下することとなるのです。

骨盤の中央にある仙腸関節周囲の筋緊張をほぐし、仙腸関節の働きをよくすることで、腰痛や股関節痛の緩和や、身体の回復機能の向上が期待できるのです。

血行の促進は可能

産後に限った話ではありませんが、一般的な骨盤矯正は筋肉をゆるめることを行うため、血行を促進することが可能です。

また、仙腸関節にアプローチする施術の場合、副交感神経を優位にすることで血管の拡張効果が得られ、それによって血行を促進することが可能となります。

血液は全身に酸素と栄養を運んでくれているため、血行がよくなることで栄養状態が改善し、身体の回復を高めたり、冷えやむくみを解消したりすることが可能となるのです。

あと、母乳も血液から作られるので、産後に骨盤矯正を受けることで血行がよくなった人の中には、母乳の出がよくなったなどという方もいらっしゃいます。

体型が元に戻りやすくなることはない

出産後半年くらいまでに産後の骨盤矯正をおこなうと、体型が元に戻りやすくなるなどと言われますが、これもまったく医学的根拠がありません。

そもそも、妊娠・出産にともなって開いた骨盤は、すみやかに元に戻るものです。そうでなければ、歩くこともままならないからです。

産後太りの本当の理由

妊娠・出産を経験した女性の中には、「出産前に履けていたパンツが履けなくなった」という方もいらっしゃることと思います。そして、それを「骨盤が開いたせいだ」と言われると、妙に納得してしまいがちです。

実際には、妊娠中の運動不足や食べ過ぎなどによって、皮下脂肪が付着してしまっているだけなのです。厳しい言い方ですが、産後太りをしている人のほとんどが、ただ太っただけなのです。

骨盤矯正がはやる理由

膝に包帯を巻かれている男性

骨盤矯正には疼痛の緩和や血行促進の効果がありますが、美容整体など、1回に1万円以上する治療院もあります。それなのに、なぜこんなに流行っているのでしょうか。

パイの奪い合い

最近は、整体院やカイロプラクティックのお店だけでなく、整骨院などでも骨盤矯正をおこなうところが増えてきています。

なぜかというと、怪我の治療だけでは食べていけないからです。整骨院の数は登録されているものだけで、45,000件以上あるとされています。コンビニの件数が全国で54,000件ほどですから、整骨院の数の多さが分かると思います。

整骨院は基本的に「骨折・脱臼・ねんざ・打撲」に限って、保険診療をおこなってよいとされています。ただ、骨折や脱臼はたいてい整形外科に行くこととなるので、実質的に整骨院では、ねんざと打撲の治療をおこなうこととなります。

ところが、整骨院が乱立し続けているため、患者さんの奪い合いが起こっているのです。実際、怪我の治療だけではなかなか食べていくことができません。

そこで、保険診療外の骨盤矯正に目をつけたのです。もともと怪我の治療で整骨院に通っている人の方が、まったくの新規患者よりも自費治療に誘導しやすいですからね。

特に、女性はダイエットという言葉に敏感なものです。整骨院内に「ダイエット」「美容」などといったポスターが貼られていれば、嫌でも反応してしまうこととなる訳です。

お客さんの無知

骨盤矯正が流行っている理由は、厳しい言い方をするとお客さんが無知だからです。なんらかの症状が出ているときに、「それは骨盤がゆがんでいるからです」と言われると、なんとなく納得してしまいがちです。

そのときに「骨盤がゆがむってどういうことですか?」「医学的に骨盤がゆがむことなんてあり得ないと思うのですが」などとつっこむような人はほとんどいません。

出産後の骨盤矯正に関しても、放っておけば自然に元に戻っていくのに、骨盤矯正を受けることで元に戻ったと説明されることで、やはり納得してしまうのです。

特に出産後の体重など、放っておけばたいていは減っていくものです。なぜなら、育児は激務であり、赤ちゃんによって母乳を吸われるからでもあります。

もちろん、信頼のおける治療家さんに身体のメンテナンスをしてもらうことは重要ですし、骨盤矯正にも一定の効果があることを否定するものではありません。

ただ、過剰なダイエット効果を宣伝したり、医学的にまったく根拠のない説明をしたりする治療院や治療家は避けた方がよいでしょう。

技術の伝承は一人育てるのに対して最低でも5年~はかかります。そして院長が第一線で治療しているところに行ってください。すぐに予約が取れるところなどは避けた方がよいかもしれませんね。

骨盤矯正の本当の意味

背骨の模型を使って患者にわかりやすく症状を説明する整体技師

骨盤矯正にダイエット効果や出産後の体型を元に戻す効果は期待できないということでしたが、では、骨盤矯正をおこなう意味とはなんなのでしょう。

仙腸関節の調整

先程少し触れたのですが、骨盤の中央には仙骨という骨があります。仙骨の両サイドには腸骨という骨があり、その2つの骨によって仙腸関節という関節が構成されています。

整体やカイロプラクティックの世界では古くから仙腸関節に注目し、その可動域をあげることによって、腰痛や股関節痛を始め、さまざまな不調の改善に取り組んできました。

医学的には長い間、仙腸関節が動く訳などないと考えられていました。ところが、近年の研究によって、仙腸関節は可動関節であるということが証明されたのです。

そこで、一部の整形外科は仙腸関節の可動域をあげる「AKA(エーケーエー)」という治療を始めたのです。それによって、手術が必要と言われた腰痛の9割が改善できるとされています。

もともと医学的に否定されていた仙腸関節の可動性や骨盤矯正の効果が、反対に医師によって宣伝されているというのも皮肉な話ですが。

仙腸関節は左右合わせて30平方cmの面積があり、そこに上半身全ての体重がかかってきます。そのため、仙腸関節の可動性がとても重要となるのです。

転んだときにはとっさに手をつきますが、その際に手首の関節のクッション機能が働くことで、骨に対する衝撃を緩和してくれています。

そして、仙腸関節にも同様の働きがあるのです。仙腸関節の動きはわずか数mm程度と言われていますが、そのクッション機能が、腰や股関節への衝撃を和らげてくれるのです。

脳に正しい情報をインプットする

骨盤矯正を否定的に捉えている人の中には、骨盤矯正の効果など「そのときだけ」と主張されることがあります。確かに、骨盤矯正の効果など、そうそう持続するものではありません。

ただ、腕がよいとされる整体師さんなどは、骨盤だけでなく脳に対するアプローチをおこなっているのです。症状を根本から治すために必要なことはなんでしょうか。それは、症状の原因を取り除くことです。

ただ、仮に腰痛の原因が育児だった場合、育児を放棄することが原因を取り除くこととなるのでしょうか。そんな訳ありませんよね。

そこで、施術をすることで脳に身体の正しい状態をインプットしたり、生活上の注意点をアドバイスしたりすることとなるのです。つまり、骨盤矯正とは単なる施術のことだけを指すのではなく。生活習慣や身体の使い方などを変化させる目的でおこなわれるという訳なのです。

脳にインプットするというのは受けてみたいと分からないかもしれません。優しいタッチでソフトな刺激のほうが脳は受け取ってくれます。色々経験されると受けた時の違いが分かります。

骨盤矯正では痩せられない

骨盤矯正の意味やダイエット効果について見てきましたが、いかがだったでしょうか。ダイエットに関して言うと、骨盤矯正によって痩せられたという人のほとんどが、運動や食事制限なども積極的におこなっています。

何の努力もせずに、骨盤矯正だけで痩せられるなどということはあり得ません。その辺りのことをちゃんと説明してくれる治療家や治療院と巡り合えるといいですね。