せっかく素敵なパートナーとめぐり合えたのに、口臭が気になってキスするのを逡巡してしまうようなことがありませんでしょうか。「もし口が臭いと思われて、それが破局の原因となってしまっては困る…」そんな方のために、今回の記事では海外と日本の歯科事情を比べながら、口臭の原因やその改善法を紹介いていきたいと思います。
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口臭でキスできない!?海外と日本の違い
口臭を始めとした口元周囲の身だしなみについては、海外と日本とで大きな考え方の違いがあります。また、海外と日本とでは歯科事情が異なっています。では、海外と日本とでどのような考え方の違いがあるのでしょうか。
海外のキスの習慣
アメリカなど、海外の映画やドラマを見ていると、寝るときに親が子供の頬にキスしたり、親しい人同士が合ったときに、ハグをして頬にキスをしたりという光景を見かけることと思います。
海外では特定のパートナー同士だけでなく、家族や親しい間柄の人とのコミュニケーション手段として、キスがおこなわれているという現実があります。
一方、日本では、キスは性的なイメージを喚起させるものとなっており、公衆の面前でキスをするような行為は、はしたないものと考えられています。
海外では毎日のように、あたり前のようにキスをする習慣があるため、口ものの身だしなみについて、日本よりも進んでいると言えるのです。
たとえば、アメリカでは子供の歯並びをキレイにすることが、親にとっての義務であると考えられています。なぜなら、歯並びの悪さは育ちの悪さを象徴すると考えられているからです。
アメリカでは俳優やモデルさんだけでなく、スポーツ選手や政治家、ニュースキャスターやコメンテーターなど、歯並びがよい人ばかりです。
人前に出る仕事をしているのに、歯並びが悪いということはとても恥ずかしいことだと考えられているのです。また、人前に出るようなオープンな仕事であればある程、他人とハグをしてキスするような機会も増えます。
そのようなときに、口臭があるなどというのはもってのほか。自分の口の臭いを管理することは、コミュニケーションの初歩中の初歩という訳なのです。
海外と日本の歯科事情
アメリカでは、歯列矯正を熱心におこなっているだけでなく、歯をホワイトニングで白くすることも、あたり前のようにおこなわれています。
これには、先に説明した口元の身だしなみという側面もあるのですが、実はもっと実利的な側面もあります。それは、歯列矯正をおこなったり歯のホワイトニングをおこなったりすることによって、虫歯や歯周病になるリスクを低下させられるということです。
日本には国民皆保険制という素晴らしい仕組みがあるので、誰でも安心して医療を受けることが可能となっています。そのため、実際の患者さんの負担分は3割で済むのです。ところが、アメリカには国民皆保険制がないため、治療にかかった費用は全額自己負担となってしまうのです。
虫歯になったことのある方ならご存知だと思いますが、中等度以上の虫歯を患ってしまった場合、治療が1回で終わるようなことはありません。
歯茎に麻酔をして虫歯になった部分を削り、ひどい場合には虫歯を削った場所の洗浄・消毒をおこなって仮の詰め物をします。そのうえで、歯型をとって被せ物の型取りをおこなうこととなります。
何日かしたら仮の被せ物をとって、被せ物を装着して、かみ合わせがあうように調整します。このように、虫歯の治療は段階を踏んでおこなわれるため、何日かに分けておこなう必要があるのです。
日本では虫歯の治療を保険診療でおこなうことが可能となっているので、1回あたりの治療費が数百円と安く済みます。ところが、アメリカで同じような治療をおこなった場合、1回につき数千円の出費が必要となります。
そのため、アメリカでは歯並びをよくして、ホワイトニングなど歯のコーティングをおこなうことによって、虫歯や歯周病になりにくくしているのです。虫歯や歯周病にならなければ、高額の治療費を払う羽目に陥ることもないという訳なのです。
キスで口臭を感じる理由は?
海外と日本とではキスに対する考え方が違うこと、またアメリカと日本では保険事情が異なることを理解して頂けたことと思います。それでは次に、キスするときになぜ不快な臭いがしてしまうのかについて見ていきたいと思います。
唾液が臭い
キスをするときに不快なにおいがする場合、大きく分けて2つの理由が考えられます。1つ目は唾液が臭いというケース、2つ目は息が臭いケースです。では、唾液がなぜ不快な臭いを放つようになるのでしょうか。
実は、唾液の中には食べカスや口内細菌、上皮細胞などさまざまなものが含まれています。それが空気中で乾燥したときに、嫌な臭いとなって現れるのです。
ただ、口臭の原因は唾液だけで推し量ることが困難です。なぜなら、以下に述べるように、口臭は口腔環境の変化や全身状態の変化(病気など)によって現れることもあるからです。
息が臭い
キスをするときに不快なにおいがする場合、息が臭くなっている可能性があります。息が臭くなる理由としては、以下の3つのケースが考えられます。
生理的口臭
生理的口臭はその名の通り、誰にでも見られるタイプの口臭です。朝起きたときに口から変なにおいがするという経験は、誰でも一度や二度はしたことがあるのではないでしょうか。
その他にも、緊張感からくる口の中の乾燥が原因となる口臭(緊張時口臭)や、お腹が空いたときに現れる口臭(飢餓口臭)もあります。
これらの生理的口臭の原因は、一般的に唾液の量が不足することだと考えられています。唾液には口の中を洗浄する働きがありますが、分泌量が低下することによって、口中の細菌が繁殖しやすくなってしまいます。
口中の細菌は歯垢(プラーク)をエサとして繁殖するのですが、その際に口臭の原因となる揮発性硫黄化合物を産生することが分かっているのです。
生理的口臭にはその他にも、加齢によってもたらされるものや、ホルモンバランスの乱れによってもたらされるものがあります。そのため、ホルモンバランスの乱れやすい女性の方が、生理的口臭が現れやすい傾向があるということです。
生理的口臭は基本的にそれほど強烈なものではなく、半径30cm以内に近寄るなどしないとそれほど感じられないため、通常の会話程度で不快感を与えるようなことはありません。また、1日中口臭がする訳でもありません。
病的口臭
息が臭ってしまう原因としては、病気が原因となる病的口臭もあげられます。病的口臭はさらに、口腔内が原因のものと、口腔外が原因のものとに分けられます。
①口腔内が原因の口臭
口腔内が原因の口臭としては、歯周病がその代表的な疾患としてあげられます。歯周病による口臭が、口腔内が原因の口臭のおよそ60%を占めるということです。
歯周病とは、歯周病菌が歯と歯茎との間で繁殖することによって、歯茎を炎症させる疾患のことを言います。初期には痛みなどの自覚症状がないため、気が付いたら進行していたというケースがほとんどです。
口腔内が原因の口臭としては、その他にも歯磨きをしないことによる歯垢の蓄積、それにともなう虫歯、また、虫歯を治療した際の詰め物の不具合などもあげられます。さらに、舌苔(ぜったい)と呼ばれる舌表面の苔のようなものが増えすぎた場合も、口臭がひどくなるということです。
②口腔外が原因の口臭
病的な口臭の中には、口腔外の病気が原因となっているものもあります。たとえば、呼吸器系の病気や循環器系の病気になると、口臭のひどくなるケースがみられます。
また、副鼻腔炎によって鼻の奥に膿がたまってしまい(蓄のう症)、それが口臭とともに臭ってしまうということもあります。
口臭は歯磨きだけでは治りません!
キスをするときに臭いがする可能性としては、唾液が臭うだけでなく、息が臭ってしまうケースもあるということです。そのため、歯磨きをしているだけでは不十分かもしれませんよ。
30歳を過ぎたら8割が歯周病
一般社団法人である「日本生活習慣病予防協会」の調べによると、平成26年の段階で、日本人の歯周病患者数がおよそ331万人であるとされています。
3年前におこなわれた平成23年の調査と比較すると、65万人もの増加が認められるということです。そのうち男性がおよそ137万人、女性がおよそ194万と、女性の有病率が高いということです。
年代別に見てみると、20代でおよそ7割が歯周病となり、30歳を過ぎると8割以上が、60歳を過ぎると9割以上が歯周病になっているということです。
そのため、歯を磨いているだけでは口臭を防ぐことができなくなってきます。歯周病によって口臭がしているような場合、まずは歯周病を治療することが重要となります。
定期的な歯のクリーニング
日本は歯のケアに対してとても消極的な国であるというデータがあります。その結果が、年をとったときに何本歯が残っているかの差となってあらわれてくるということです。
たとえば、予防歯科の先進国であるスウェーデンでは、80歳時点での平均残存歯数が25本となっています。それに比べて、日本人の80歳時点での平均残存歯数は、たったの8.8本(6.8本とするデータも)となっています。
アメリカ人の80歳時点での平均残存歯数が17本、イギリス人の80歳時点での平均残存歯数が15本であることと比較しても、日本の老人がいかに、自前の歯を失っているのかが分かることと思います。
このような結果が現れる原因として、欧米諸国と日本との定期健診受診率の違いがあげられています。日本で歯の定期健診を受診する人は、たったの2%とされています。
予防歯科の先進国であるスウェーデンではおよそ90%の人が定期健診を受診しており、アメリカでも80%の人が、イギリスでも70%の人が定期健診を受診しているというデータがあります。
日本には国民皆保険制があるため、虫歯や歯周病になった際、比較的安価で治療を受けることが可能です。そのことが反対に、普段から虫歯や歯周病を予防するという意識を低下させているとしたら、皮肉と言うしかありません。
口臭予防はもちろんですが、いつまでも自前の歯で美味しくごはんを食べるためにも、定期健診を受診して、歯のクリーニングをおこなってもらうように心がけましょう。
家でのケアも重要
アメリカではホワイトニングや歯列矯正をおこなうのが一般的ですが、だからと言って家では何もしなくてよいという訳ではありません。
せっかく歯の見た目がきれいになったのであれば、それを維持しようとするモチベーションも高くなります。歯を磨くだけでなくデンタルフロスや歯間ブラシを用いて、毎日の汚れをしっかりと落とすことが重要となります。
歯科先進国スウェーデンに習う
スウェーデンは予防歯科の先進国であるということでしたが、実際にどのようなことをおこなって歯の健康を守っているのでしょうか。
デンタルフロスの使用
フロスとは、歯と歯のあいだを磨くための糸のことを意味しており、糸巻タイプと柄がついたタイプがあります。
歯磨きだけでは落とすことのできない、歯と歯の間にこびりついた歯垢(プラーク)を取り除けるというメリットがあり、それによって虫歯や歯周病になるリスクを下げることが可能です。結果的に口臭にもつながってしまいます。
その他の清掃道具
デンタルフロス以外にも、洗口剤と呼ばれるものを用いて、口の中を清潔に保つという手があります。ただし、洗口剤には医薬品と医薬部外品、そして化粧品の3種類があることを覚えておきましょう。
スーパーやコンビニなどにおかれている洗口剤は一般的に医薬部外品や化粧品に分類されるものであり、歯医者さんで処方されるものとは効果や効能が異なっています。
定期的に歯のクリーニングをおこなうのであれば、歯医者さんに医療用の洗口剤を処方してもらうのがよいでしょう。
定期的な歯科受診
歯の健康を保つには当然のことながら、自宅でのケアが欠かせません。食後に歯を磨くのはもちろんのこと、夜遅くなってからの食事を控えることも大事です。
ただ、よほど歯並びがよくて、毎食後にフロスを用いて掃除をしているような場合でもない限り、どうしても磨き残しが出てしまいます。
磨き残しを放置すると細菌が繁殖して、その結果、虫歯や歯周病になってしまいます。そのようなリスクを下げるためにも、定期的に歯科を受診するようにしましょう。早期発見早期治療です。
安心してキスをするには普段からの習慣が大事
以上、見てきましたように、口臭の原因は実にさまざまです。ただ一つ言えることは、口臭予防をするためには普段の生活習慣や食習慣、歯磨き習慣を見直すことが重要ということです。
たとえば、疲労や睡眠不足が続いて自律神経のバランスが乱れていると、唾液の分泌量が減少して口臭がひどくなることもあるでしょうし、食後に歯を磨かなければ、虫歯や歯周病になるリスクが高まることでしょう。
パートナーに安心してキスをするためにも、普段からの生活習慣を見直して、規則正しい日常と、清潔な口内環境を意識しましょう。
愛する人と爽やかなキスを
キスをするときに気になる臭いについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。不快なにおいは意外なところからやってくるものです。とは言うものの、突然、虫歯や歯周病になる訳ではありません。
日頃から歯科医院を定期的に受診して、歯のクリーニングをしてもらい、口臭の根を断つようにしましょう。また、生活習慣病にならないよう、食習慣や運動習慣を見直すことも重要ですよ。