歯科衛生士が教える!ホワイトニングの痛みの原因と対処法!

口元の身だしなみとして歯のホワイトニングをする人も増えていきました。ところが、人によって歯ホワイトニングをした後に痛みが出ることもあるそうです。今回の記事では、「安全にホワイトニングをしたいのだけど、痛みを予防する方法はないの?」という方のために、ホワイトニングによる痛みの原因や、その対処法について紹介していきたいと思います。

柴田はるひ
この記事の監修者
歯科衛生士
歯科医師として、30年近く審美治療にかかわってきて、治療後に患者様の笑顔がより輝いてくることに大きな喜びを感じています。 ホワイトニングや矯正治療後に、「これまでコンプレックスだった箇所が自慢の個所に変わった!」「よく笑うようになった!」など「患者さまの人生を変えることに貢献できた!」と思える瞬間が歯科医師としての一番の喜びだと思っています。最近心に残った言葉は「幸せ」には「人から与えられる幸せ」「自分の力で何かを得る幸せ」「他人に与える幸せ」の3種類あり、「他人に与える幸せ」を知っている人が最高の幸せ者である、という言葉です。 私も人生の折り返し地点を過ぎてきましたので、これからは「他人に与える幸せ」を日々実 践していきたいと考えています。 座右の銘は全ての人を尊重する、日々感謝です。 趣味は格闘技観戦、読書です。
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ホワイトニングのメカニズムを知ろう

ホワイトニングによる痛みの原因について解説する前に、まずはホワイトニングによってなぜ歯を白くすることができるのか、そのメカニズムについて知っておきましょう。メカニズムを知ることで、歯をホワイトニングした後の痛みを予防しやすくなりますよ。

フリーラジカル効果

フリーラジカルというのは、日本語で言うところの「活性酸素」のことを意味します。活性酸素というと、アンチエイジング界では悪者のようにいわれることもありますが、人体を外敵から守るという大事な働きもしてくれています。

歯科医院で歯のホワイトニングをする際には、一般的に過酸化水素を配合したホワイトニング剤が用いられます。過酸化水素は口の中で水と酸素とに分解されるのですが、その際に化学的に不安定な活性酸素(フリーラジカル)も発生するのです。

フリーラジカルには、歯のもっとも表面にあるエナメル質に付着している、「歯を変色させている有機質」に反応する性質があり、その有機質を分解することで歯を白くしてくれるのです。

ホワイトニングをおこなう際には、歯の表面にホワイトニング剤を塗布したあと、特殊なライトを照射するのが通常ですが、それも過酸化水素の働きを活性化して、フリーラジカルを発生させやすくするためにおこなわれるのです。

マスキング効果

実は、ホワイトニングをおこなうことによって歯を白くするだけでは、歯を白く見せることはできません。なぜなら、エナメル質の下には象牙質があるからです。

エナメル質は通常、光沢のある白色をしているのですが、その下にある象牙質は個人差こそあるものの、通常は黄色みを帯びています。そのため、エナメル質を白くするだけだと、象牙質が透けて見え、結果として歯が黄色っぽく見えるのです。

では、なぜホワイトニングをおこなうことで歯が白くなるのでしょうか。それを理解するには、エナメル質の構造について知っておく必要があります。

エナメル質の表面を詳しくみてみると、平ではなく角柱構造になっていることが分かります。まるで長方形の柱が林立するように、エナメル質の表面を覆っているのです。そのため、エナメル小柱などと呼ばれることもあります。

エナメル小柱には、リンやカルシウムの沈着度に違いがあるため、濃度の薄いところで象牙質が透けて見えてしまい、結果として歯が黄色く見えるのです。

ホワイトニングには、このエナメル小柱の先端を角状ではなく、半円状にする効果があるのです。それによって、歯の表面にあたる光が乱反射して、まるで曇りガラスのように歯を白く見せてくれるという訳なのです。

ホワイトニングで痛みを伴う原因

ホワイトニングのメカニズムについては理解して頂けたことと思います。それでは次に、ホワイトニングにともなってなぜ痛みが出てしまうのか、その原因について見ていきたいと思います。

虫歯

ホワイトニングにともなって痛みが出る原因の1つとして、虫歯になっている歯のある可能性があります。通常、ホワイトニングをする前には、虫歯や歯周病の治療をおこなうこととなります。

歯科医院では問診や検査の段階で、虫歯や歯周病を発見した場合、原則としてそちらの治療が優先されます。なぜなら、ホワイトニングに用いる薬剤がしみて痛みが出てしまうからです。

歯の劣化による痛み

ホワイトニングにともなって痛みが出る原因としては、歯の質そのもの自体が劣化している可能性もあげられます。歯の質の劣化としては、以下のようなケースが考えられます。

①亀裂

歯ぎしりや食いしばり、強いかみ合わせなどの原因によって歯の表面に亀裂が入っている場合、ホワイトニング剤が歯にしみて痛みが出るケースがあります。

特に、亀裂がエナメル質にとどまらず、象牙質にまで及んでいる場合、痛みの出るリスクが上昇します。なぜなら、象牙質の内側には歯髄、いわゆる歯の神経があるからです。

②咬耗

咬耗(こうもう)とはあまり聞きなれない言葉ですが、歯ぎしりをしたり歯を食いしばったりすることによって、歯の表面が摩耗してしまうことを意味します。

その場合も、象牙質にまでホワイトニング剤が浸透することによって、歯がしみたり痛みを感じたりするリスクが上昇します。

③くさび状欠損

くさび状欠損は、歯と歯茎の間がくさび状に欠けてくる状態のことを言います。歯を磨くときに強い力で磨きすぎたり、咬み合わせが悪かったりすることで起こるといわれています。

くさび状欠損が進行した場合、知覚過敏を発症しやすくなるといわれています。なぜなら、歯が摩耗してくることによって、神経に近づいてしまうからです。当然のことながら、ホワイトニング剤によって痛みが生じるリスクも上がってしまいます。

④知覚過敏

くさび状欠損のところでも出てきましたが、知覚過敏になると、歯がしみたり痛みを感じやすくなったりしてしまいます。知覚過敏になっている歯は、エナメル質が摩耗して象牙質が露出してきます。

象牙質には象牙細管と呼ばれる細い管があって、それが神経に通じているのです。そのため、冷たい物や熱いものが歯にしみたり、ホワイトニングによって痛みが生じたりするのです。

知覚過敏になってしまう原因は、先にも出てきたくさび状欠損のほか、歯周病や虫歯、かみ合わせ、歯ぎしりや歯を強くかみしめる癖などいろいろです。

歯周病

知覚過敏のところで少しふれましたが、歯周病が原因でホワイトニングにともなって痛みが生じるケースもあります。これは、歯周病によって歯茎が下がり、象牙質が露出するためだと考えられています。

歯茎に付着

ホワイトニングにともなって痛みが出る原因としては、歯そのものには問題がない場合もあります。どういうことかというと、ホワイトニング剤が歯茎に付着したような場合です。

ホワイトニングを歯科医院でおこなう場合には、歯のプロフェッショナルである歯科医や歯科衛生士が施術をおこなうため、歯茎にホワイトニング剤が付着するようなことはあまりありません。

ただ、自宅でホワイトニングをおこなう場合、ホワイトニング剤の量が多かったなどの理由で、歯茎にホワイトニング剤が付着し、それが原因で痛みの生じる可能性があります。

歯の病気

ホワイトニングにともなって痛みが生じる原因としては、歯に何らかの病気を抱えている可能性もあげられています。代表的なものを2つ紹介しておきたいと思います。

①エナメル質形成不全症

歯を見てみると、もっとも表面にエナメル質があって、その内側に象牙質、さらに内側に歯髄(いわゆる歯の神経)といった構造になっています(厳密に言うともっと細かく分けられますが)。

歯のもっとも表面にあるエナメル質は、人体の中でもっとも固い物質であり、歯を外部の刺激から守ってくれています。ところが、なんだかの原因によって、このエナメル質が正常に形成されない人もいます。

エナメル質形成不全症は、遺伝が原因の場合もあれば、歯の成長期に十分な栄養が得られなかったことなども原因となり得ます。

エナメル質形成不全症がある場合、歯の象牙質が露出してしまっていることから、知覚過敏や虫歯になりやすくなります。当然、ホワイトニング剤によって痛みの生じるリスクも上昇してしまいます。

②酸蝕症

酸蝕症(さんしょくしょう)とは、酸性の食べ物や飲みもの、または胃液などによって歯が溶かされてしまう疾患のことを言います。

清涼飲料水の摂りすぎや過度なダイエット、逆流性食道炎、健康目的の酢の過剰摂取など、老若男女を問わず見られる疾患です。

酸蝕症によって歯の表面にあるエナメル質が溶けてしまうと、象牙質が露出することとなるので、やはり知覚過敏になってしまうのです。

ホワイトニングの薬剤が強すぎる

ホワイトニングにともなって痛みが出る原因として、ホワイトニングに用いる薬剤が強すぎるという可能性も考えられます。

歯科医院でホワイトニングをおこなう際には、その人にあったホワイトニング剤の濃度が選択されることとなりますが、通販でホワイトニング剤を購入する場合などは注意が必要です。

痛みが出た場合の対処法

ホワイトニングにともなって、もしくはホワイトニングをした後に、もし痛みが出てしまった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。応急処置から根本的な対策まで紹介したいと思います。

冷たいものや熱いものを避ける

ホワイトニングによる痛みは、知覚過敏が原因となって起こるケースも多いので、刺激の強い冷たい物や熱いものの摂取を控えるようにしましょう。

痛み止めの服用

ホワイトニングをした後の痛みがあまりにもひどくて耐えがたい場合には、一時的に痛み止めを服用するとよいでしょう。市販のロキソニンなどで大丈夫です。

フッ素やカルシウムペーストなどで歯をコーティング

もともと知覚過敏気味の人は、普段からフッ素やカルシウムペーストを含有した歯磨き粉などを使い、歯の再石灰化や虫歯予防をおこなうとよいでしょう。

知覚過敏抑制剤の使用

知覚過敏を抑制する方法としては、「知覚過敏抑制剤」を使用するという手もあります。ただし、原則として歯科医院で処方してもらう必要があります。

治まらない場合は歯科医院へ

ホワイトニングをした後の痛みがどうしても治まらないような場合、かかりつけの歯科医院で診てもらいましょう。たいていの場合は、1日もすれば症状は収まってしまいます。

痛みを出さないために普段から行うべきこと

ホワイトニングをした後に痛みがでないようにするためには、普段からどのようなことに気を付けていればよいのでしょうか。痛みの出る原因を考えた場合、以下のような対策があげられます。

歯質の強化

ホワイトニングにともなって痛みが生じる場合、多くのケースで知覚過敏の可能性が考えられます。そのため、普段から歯の質を強化しておくことが重要です。

フッ素やカルシウムペーストを含んだ歯磨き粉で歯を磨いたり、歯茎をブラッシングすることによって歯茎の血行を改善したりすることが効果的です。

ナイトガードの使用

ナイトガードとは簡単に言うと、歯を歯ぎしりや歯のくいしばりから守ってくれるマウスピースのことです。寝ている間の装着しておくことで、歯ぎしりによる咬耗や亀裂から歯を守ることが可能となります。

市販品もありますが、歯の形状や大きさ、歯並び等は人によってさまざまなので、歯科医院でナイトガードを作ってもらうのが確実でしょう。

歯周病の予防

歯周病が重症であった場合、そもそも歯科医院ではホワイトニングをおこなうことができません。自分でホワイトニングをおこなう場合にも、歯周病にならないように口内環境を良好に保っておきましょう。

虫歯の治療

歯周病と同じく、虫歯がある場合にも原則としてホワイトニングはできません。もし虫歯がある場合には、ホワイトニングをする前に歯の治療をしてもらいましょう。

自分の歯に原因がある場合が多い

ホワイトニングにともなう歯の痛みの原因および、その対処法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。ホワイトニングにともなう痛みの多くは、知覚過敏によるものだということです。

ただ、歯そのものや口内環境に問題があるケースも少なくありません。初めてホワイトニングをするときには、必ず歯科医師の診断を受けるようにしてくださいね。