ニキビが出来ると見た目が悪いだけでなく、痛みをともなうこともあるので厄介なものです。若いうちならまだしも、大人になってニキビが出るのは嫌なものです。そんなニキビと便秘との意外な関係に迫ります。
ニキビは青春の象徴だなどと言われますが、大人になってもニキビが出続ける場合、もしかしたら便秘が関係しているかもしれません。便秘になると肌荒れの見られることがあることは、多くの方がご存知だと思います。今回は、便秘とニキビとの関係について解説することで、便秘を根本的に治す方法についても迫りたいと思います。
ニキビってなに?
ニキビと便秘との関係について説明する前に、そもそも私たちが「ニキビ」と呼んでいるものの正体について知っておきましょう。
正式名称は尋常性痤瘡のこと
ニキビは、正式には「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれています。ニキビ以外にも、アクネと呼ばれることがあります。なぜなら、アクネ菌と呼ばれる細菌の一種が原因で、尋常性痤瘡のできることがあるからです
尋常性痤瘡は顔だけではなく、上半身の体幹部にもみられる吹き出物のことで、思春期の若者によくみられるほか、30代くらいまでの女性に多くみられるとされています。
ニキビの原因
ニキビができるそもそもの原因は、毛包に皮膚の剥がれおちたものが詰まったり、肝臓した皮脂が毛包をふさいだり、細菌によって毛包部が炎症を起こしたりすることによって発生します。
思春期にニキビが増える原因としては、テストステロンなどの「アンドロゲン」の分泌量が増大するからだと考えられています。
アンドロゲンの分泌量が増大することによって皮脂腺が刺激されると、大量の皮脂が分泌されることとなります。大量に分泌された皮脂によって毛包がふさがれることで、ニキビの発生するリスクが高くなるわけです。
一般的には、20代の半ばになる頃にはアンドロゲンの分泌量が低下してくるため、自然とニキビができにくくなってきます。
ただ、女性の場合、ホルモンバランスの乱れによって、ニキビができやすくなることもあるということです。特に、月経時や妊娠・出産期など、ホルモンバランスが大きく乱れる時期に、ニキビの出やすくなることがあるということです。
それ以外にも、ある特定の医薬品を用いることによって、ニキビが悪化したり、再発したりすることもあります。ニキビを誘発する医薬品としては、たんぱく同化ステロイドやコルチコステロイドなどがあげられています。
ニキビの症状
一口にニキビと言っても、その種類は実にたくさんあります。ニキビのことを面疱(めんぽう)と呼ぶことがありますが、面疱には白色面疱や黒色面疱などの種類があります。
皮脂によって毛包のふさがれた状態が継続すると、次第に炎症が拡大していきます。それによってニキビが腫れあがり、痛みをともなうようなケースもあります。
炎症が深い場所で起こった場合、嚢腫を形成することもあります。また、さらに深い場所で炎症が起こった場合、膿んでしまい膿瘍に至ることもあります。
ニキビの治療法
軽度のニキビの場合、抗菌作用のある外用薬を用いて治療をおこないます。もっともよく知られている外用薬としては、トレチノインがあげられます。
ただし、トレチノインを用いた場合、副作用として日光に過敏に反応したり、皮膚に刺激を与えすぎたりします。その場合、アダパレンやサリチル酸、グリコール酸などを代用することがあります。
ニキビが中等度にまで至った場合は、抗菌作用のある内服薬を服用するのが一般的です。内服薬としては、エリスロマイシンやテトラサイクリンなどがよく知られています。
重度のニキビになると、抗菌薬が効かないケースも出てきます。そのような場合、イソトレチノインを用いて治療することとなります。
ただ、イソトレチノインにはトレチノインと同様、重い副作用の現れる危険性があります。また、妊娠中の女性が使用すると、胎児に悪影響を及ぼすため、使用が禁止されています。
便秘でニキビが出来る理由ってなに?
ニキビに関する基本的なことをしって頂いたところで、次に、便秘が続くことでなぜニキビができるのか、その理由について見ていきたいと思います。
便秘でニキビが出来る理由・腸内環境の悪化
便秘によってニキビができてしまう理由としては、腸内環境の変化があげられます。腸内には善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌が存在しています。
腸内環境が良好な場合、腸内では善玉菌が優勢な状態となっています。逆に、腸内環境が悪くなっている場合、腸内では悪玉菌が優勢な状態となっています。
日和見菌はその名の通り、優勢な方に加勢する細菌となっています。そのため、便秘の状態が続けば続くほど、悪玉菌が優勢になるため、腸内環境が悪化してしまうのです。
便秘にともなって肌荒れやニキビ(吹き出物)がみられたり、お化粧のノリが悪くなったりといった経験のある方は多いのではないでしょうか。
なぜそのようなことが起こるかというと、便秘の状態が続くことによって新陳代謝が不活発になるからです。新陳代謝とは、古いものが新しいものへと生まれ変わることを意味します。
肌の場合、ターンオーバー(肌の生まれ変わり)がスムーズにいかなくなり、それによってニキビや肌荒れといったトラブルが起こりやすくなるのです。
便秘でニキビが出来る理由・便の腐敗
便秘とは、腸内に便が滞った状態のことを意味します。そして、腸内に長期間にわたって存在している便は、やがて腐敗して有害なガスや発がん性物質を発生させることとなります。
有害なガスは血液中へと溶け込み、やがて全身に回ることとなります。有害なガスが皮膚の下を流れる毛細血管に入ることによって、肌の健康も阻害されることとなります。
ちなみに、認知症を患っている人には便秘が多いといわれているそうです。もしかしたら、有害なガスが脳内の血管へと流れ込むからかもしれませんね。
便秘でニキビが出来る理由・活性酸素
最近の研究によって、ニキビができる原因として、活性酸素がかかわっているのではないか、という説がみられるようになっています。
活性酸素は私たちの身体を、細菌やウイルスなどの外敵から守ってくれる存在なのですが、大量に発生すると、今度は私たちの体細胞を攻撃し始めるのです。
そして、活性酸素が大量に発生する理由として、便秘があげられているのです。便秘のときは、腸内で悪玉菌が優勢になっています。悪玉菌が優勢になると、活性酸素が作られやすくなると考えられているのです。
ニキビの元となる便秘の種類
便秘になるとなぜニキビができやすくなるのかは、以上の説明で理解して頂けたことと思います。では、ニキビの元となる便秘には、どのような種類があるのでしょう。
ニキビの元となる便秘その1・器質性便秘
ニキビの元となる便秘としては、器質性便秘と呼ばれるタイプの便秘があります。器質性の便秘とは、腸管の形態異常や、開腹手術後の腸管の癒着、なんらかの疾患によって引き起こされる便秘のことを言います。
後に出てくる機能性便秘の場合と異なり、器質性便秘は元となる疾患を治療しないことにはなかなか改善がみられません。そのため、専門の医療機関で適切な治療がおこなわれることとなります。
ニキビの元となる便秘その2・機能性便秘
ニキビの元となる便秘には、機能性便秘と呼ばれるタイプの便秘があります。私たちが一般的に「便秘」という言葉を用いる場合、たいていは機能性便秘のことを指すケースが多いようです。
一過性単純性便秘
一過性単純性便秘はその名の通り、一過性にみられる単純な便秘です。たとえば、たまたま食べ過ぎてしまって、一時的に便秘になるような場合です。
一過性単純性便秘の特徴は、一時的な便秘がみられるものの、いったん排便をすれば、その後は普通に排便が見られるということです。
弛緩性便秘
弛緩性便秘は、腸の蠕動(ぜんどう)機能が低下し、便が肛門の手前にある直腸へと送られにくくなることで起こるタイプの便秘を意味します。
運動不足などによる筋力の低下や腹圧の低下が原因となっておこるタイプの便秘で、出産後の女性や高齢者によくみられるということです。
弛緩性便秘になると、便がなかなか先へと送られなくなってしまうため、連続性のない途切れがちな便が排出されることとなります。
けいれん性便秘
けいれん性便秘は、ストレスなどが原因の緊張によって、腸管までもが緊張して収縮し、便が通りにくくなることによって起こるタイプの便秘です。
けいれん性便秘の特徴として、ウサギのフンのようにコロコロとして固い便が出るということがあげられます。
直腸性便秘
ニキビの元となる便秘の種類には、直腸性便秘と呼ばれるものもあります。直腸性便秘には、弛緩性便秘やけいれん性便秘とは異なり、直腸まではちゃんと便が送られるという特徴があります。
直腸までは便が送られるものの、便意がうまく脳に伝わらないことで、直腸に固くなった便がたまってしまうという訳なのです。
直腸性便秘は、習慣性便秘と呼ばれることもあり、朝の時間に十分なトイレタイムを設けられなかったり、トイレを無理に我慢したりすることによって起こります。
また、習慣的に便秘薬を服用していると、自分の力では便意を催すことができなくなってしまいます。さらに、便秘薬の常用によって薬の効果がなくなり、それによって便秘がさらに悪化することもあります。
ニキビの元となる便秘の改善法とは?
ニキビの元となる便秘には、いろいろな種類のあることが分かって頂けたことと思います。では、ニキビの元となる便秘は、どのようにして改善するとよいのでしょう。
ニキビの元となる便秘の改善法その1・便を出す
ニキビの元となる便秘の改善法としては、あたり前のようですが、まずは便を出すということがあげられます。便秘の元となっている便を出さないことには、便秘の改善を始めることができません。
便秘を改善するためにヨーグルトを食べたり、はちみつを摂取したりしている人もいると思いますが、それらのことは、便を出した後におこなうべきなのです。
今現在、腸内に便がたまっているという人が、ヨーグルトを食べたり、はちみつを摂取したりしても、あまり意味がありません。
ニキビの元となる便秘の改善法その2・腸内環境を改善する
ニキビの元となる便秘の改善法としては、腸内環境を改善するということもあげられます。腸内環境が悪化すると、悪玉菌が増え、便秘になるだけでなく、ニキビができるリスクも上昇します。
ただし、先ほども説明したように、腸内環境の改善は、便を出した後におこなうことが重要です。便がたまっている状態で腸内環境の改善に取り組んでも、あまり効果がありません。
便秘薬の服用や医師の指導によって便通が見られたら、いよいよ腸内環境の改善を始めましょう。腸内環境を改善するためには、乳酸菌の摂取が効果的です。
乳酸菌は腸内で善玉菌のエサとなり、結果として腸内に便が改善されることとなるのです。乳酸菌の摂取にはヨーグルトを食べるという手もあるのですが、サプリメントを服用した方が効果的でしょう。
というのも、私たちの腸内には100兆から1000兆もの細菌が住んでいるとされているからです。市販のヨーグルトを1パック(450g)食べたところで、腸内環境を改善するほどの乳酸菌の摂取は困難なのです。
もちろん、ヨーグルトを摂取することが無駄だという訳ではありませんが、あまりにもたくさんのヨーグルトを摂取した場合、動物性たんぱくを過剰に摂取することとなり、かえって便秘が悪化することもあります。
ニキビの元となる便秘の改善法その3・善玉菌を増やす
便を出して腸内環境の改善をおこなったら、次に善玉菌を増やすということをおこないます。腸内環境は一度よくなったらそのままの状態が継続するという訳ではありません。
良好な腸内環境を維持するためには、善玉菌にえさを与える必要があります。善玉菌の餌としては、オリゴ糖やはちみつ、水溶性の食物繊維などがあげられています。
便秘には様々な悪影響がある
今回は便秘とニキビとの関係について見てきました。便秘の状態が続くと、腸内の便が腐敗して、有害物質やガス、発がん性物質などを放つようになり、ニキビだけでなくさまざまな悪影響を身体に与えてしまいます。
たかが便秘だと侮らずに、長期間にわたって便秘がみられるようであれば、一度、消化器内科や便秘外来などを受診し、専門家のアドバイスを受けるようにしてくださいね。