一口に便秘といっても、さまざまなタイプの便秘があり、それに応じた便秘薬が開発されています。今回の記事では、便秘の原因や便秘の種類、また、便秘薬の種類やその副作用について解説します。
「便秘にはコーラック」などというコマーシャルもありますが、便秘の女性にとって便秘薬はそれほど珍しくもないものだと思います。ただ、便秘にはいくつかの種類があり、それに応じた便秘薬を使うことが重要となります。今回は、普段あまり意識することのない便秘の種類や便秘薬の種類、また、便秘薬の副作用について解説したいと思います。
CONTENTS
便秘の種類
一口に便秘と言っても、その原因やタイプはさまざまです。便秘薬も、便秘のタイプに応じて選択する必要があります。そこで、便秘にはどのような種類があるのかについて始めに知っておきましょう。
・機能性便秘
便秘の中には機能性便秘と呼ばれるタイプの便秘があります。私たちが通常、便秘というものをイメージする場合、機能性便秘であることがほとんどのようです。
・一過性単純性便秘
一過性単純性便秘は読んで字のごとく、一過性に見られる単純な便秘のことです。出かけた先にたまたまトイレがなくて便意を我慢したいたような場合や、乱れた食生活やストレスフルな生活を続けていたような場合に見られるタイプの便秘です。
・直腸性便秘
直腸性便秘は、別名を習慣性便秘とも言います。朝の時間を慌ただしく過ごしていて、ゆっくりとトイレに入る時間がない人や、朝食を食べる習慣のない人などによく見られます。
また、便通がこないために便秘薬を濫用すると、自然な便意がやって来なくなり、やがて直腸性便秘へと至ります。直腸性便秘になると、便が固くなり、途切れがちになります。
・痙攣性便秘
痙攣性便秘は、自律神経が乱れることによって見られることが多く、便秘と下痢を繰り返したり、排便の前に痛みが生じたりするという特徴があります。
大腸の下部(下行結腸やS状結腸)に緊張が見られることによって痙攣が起こり、便の通り道が狭くなってしまうことで便秘へと至ります。痙攣性便秘になると、便がウサギの糞のように固くコロコロになります。
・弛緩性便秘
弛緩性便秘は筋力の低下や腹圧の低下によって、腸の蠕動が弱くなり、腸管内に便が長くとどまることによって水分が吸収され過ぎてしまい、結果として便秘になります。
弛緩性便秘は出産後の女性や高齢者に多く見られますが、その原因として筋力の低下があげられています。
・器質性便秘
器質性便秘は別名を症候性の便秘とも言い、内分泌疾患や神経疾患、腸管運動の麻痺などが原因となって起こるタイプの便秘を意味します。
また、腸管や腸管に隣り合う内臓の炎症、腫瘍などによって便の通り道が狭くなり、それにともなって便秘が見られることもあります。
・薬剤性便秘
薬剤性便秘はその名の通り、なんらかの薬剤を用いることで、その副作用として起こるタイプの便秘のことを言います。パーキンソン病、うつなどの治療に用いる薬剤や、ガンの痛み止めなどで便秘の起こるケースがあるということです。
便秘の4つの原因
便秘には様々な種類のあることが理解して頂けたことと思いますが、では、そもそもなぜ便秘になってしまうのでしょうか。便秘の原因としては、主に以下のようなものがあげられます。
便秘の原因①排便習慣
男性には分かりづらい悩みかもしれませんが、朝起きたら必ず便意があるとか、朝ごはんを食べたら便意が訪れる人ばかりではありません。
特に女性は朝の支度に時間がかかることから、朝ごはんを抜きで済ませる人も多いことと思います。朝起きて何も口にしないと、便意が起こりにくくなり、結果として便秘になるリスクが高くなります。
また、朝忙しいからと便意を我慢することで、便秘になってしまうこともあります。他にも、自宅のトイレでないと用を足せないとか、出かけた先でトイレが見つからないなどの原因で便秘になってしまうこともあります。
便秘の原因②筋力の低下
筋力の低下も便秘の原因の1つとしてあげられます。特に、腹筋が弱くなったり、姿勢を支える筋肉が弱くなったりすることで、腹圧の低下が起こると便秘になるリスクが高くなります。
便は大腸によって水分を吸収されながら、大腸の蠕動によって直腸から肛門へと送られます。ところが、筋力の低下によって蠕動が鈍くなると、便が腸内に留まる時間が長くなるのです。
正常な便は適度な固さと湿度を持っているものですが、大腸内で水分を吸収され過ぎることによって、固くてコロコロとした便になってしまうという訳なのですね。
便秘の原因③ストレス
ストレスはいろいろな病気の元となりますが、便秘に関しても例外ではありません。なぜなら、ストレス状態が継続すると、自律神経のバランスが乱れるからです。
自律神経とは、私たちの生命活動を司る神経のことで、交感神経と副交感神経がバランスをとることによって、血流を調整したり体温を調整したり、臓器が正常に動いたりするようにしてくれているのです。
たとえば、ストレス状態が継続すると、交感神経が優位になりすぎてしまいます。交感神経が優位になると、血管が収縮して血液の循環が悪くなります。
血液は全身に酸素と栄養を運んでいるため、血行が悪くなった場所には栄養状態の低下が見られることとなります。腸の栄養状態が低下すれば、蠕動も弱くなり、便秘になるリスクが高くなってしまいます。
また、ストレス状態が継続すると、睡眠の質が低下します。私たちの食べたものは、夜寝ている間に消化・吸収されるので、睡眠の質が低下することによって、便秘になるリスクが高くなるという訳なのです。
便秘の原因④食習慣
便秘になる原因としては、食習慣もあげられます。特に、現代人の食事にはビタミンやミネラルが不足しているとされますが、その要因として野菜や果物の摂取量が少ないということがあげられます。
食物繊維には便の嵩を増すことによって腸管を刺激し、便意を促す働きがあります。そのため、食物繊維の摂取量が減少すると、便意が起こりにくくなり、一過性単純性便秘や直腸性便秘などのリスクが高くなります。
また、朝ごはんを食べる習慣がなかったり、朝起きたときに水分を摂る習慣がなかったりすることによっても、便秘になるリスクが高くなってしまいます。朝起きたら1杯の白湯を飲むことで、便秘の改善が期待できますよ。
便秘薬その1・浸透圧性下剤
便秘の種類と便秘の原因について知ってもらったところで、次に便秘薬の種類について見ていきたいと思います。一口に便秘薬と言っても、さまざまな便秘薬がありますよ。
塩類下剤
塩類下剤は、腸内の有害物質を除去する目的で用いられる便秘薬で、機能性便秘や器質性便秘だけでなく、食中毒や薬物中毒のときにも用いられています。
硫酸マグネシウムや酸化マグネシウムを主原料として作られていることが多く、腸内の便を液体状にして、腸の蠕動を促進することによって便秘の解消を目指します。
たくさんの水分と一緒に塩類下剤を服用することで、即効性を得られること、習慣性が少ないことから長期にわたって服用できることがメリットとなっています。
塩類下剤の副作用としては、吐き気や胸やけ、食欲の低下などがあげられています。また、長期にわたって服用した場合、高マグネシウム血症になり、脱力感を覚えることがあるということです。
膨張性下剤
膨張性下剤はその名の通り、腸管内で膨張することによって腸管を刺激し、便意を生じさせる目的で用いられる便秘薬です。
カルボシキメチルセルロースナトリウムという成分が主となっており、2日から3日に渡って服用することで、便秘の解消が期待できるということです。
副作用としては吐き気や胸やけ、嘔吐やお腹の張った感じなどの見られることがあるということです。ただし、腸に狭窄が見られる場合や、極端に便が固くなっている際に用いることは厳禁とされています。
糖類下剤
糖類下剤には、D-ソルビトールやラクツロースがあります。D-ソルビトールは、バリウムを飲んだ後の便秘を防ぐ目的で服用されます。飲みすぎるとお腹が痛くなったり、お腹が貼ったりすることがあります。
ラクツロースは肝機能障害が疑われる場合に見られる便秘を改善する目的で用いられます。副作用としては胸やけ、吐き気、腹痛や食欲の低感度があげられています。なお、ラクツロースの服用によって便が水っぽくなった場合、直ちに服用をやめて医師に相談する必要があります。
浸潤性下剤
浸潤性下剤は直腸性便秘や弛緩性便秘の改善に用いられるだけでなく、便秘が原因となって痔を発症している人にも用いられる便秘薬です。
便を軟らかくした上で腸の蠕動を活発にすることで、便秘の解消を目指します。夜寝る前に大量の水とともに服用することで、翌朝の排便がスムーズに起こるということです。
有効成分としては、カサンスラノールやジオクチルソジウムスルホサクシネートがあげられています。副作用としては胸やけやお腹が張る感じなどのほかに、口が渇くといったことが見られます。
また、授乳中の女性や腸の狭窄がある人、便が極端に固くなっている人が服用することは厳禁とされています。
便秘薬その2・刺激性下剤
便秘薬には上記のような浸透圧を調整することで便秘の解消を目指すものもあれば、以下に紹介するような腸壁を刺激して、腸の働きを活発にすることで便秘の解消を目指すものもあります。浸透圧性の下剤よりも効果が高いのですが、習慣性に移行するリスクもあります。
大腸刺激剤
大腸刺激剤は、主に直腸性便秘や弛緩性便秘に用いられる便秘薬で、大腸の粘膜を刺激することによって大腸の機能を活発にし、便秘の解消を目指します。
夜寝る前にたくさんの水分とともに服用することで、翌朝の排便がスムーズになります。ただし、継続的に服用するとなかなか効かなくなってきてしまいます。
大腸刺激剤としては、ジフェニール誘導体やアントラキノン誘導体があげられます。ジフェニール誘導体は習慣性が少ないため、妊婦さんや赤ちゃんの服用も可能だということです。
アントラキノン誘導体はダイオウやアロエ、センナといった生薬に含まれており、やはり腸壁を刺激することによって蠕動を高め、便秘の解消を目指します。
継続して服用すると耐性ができてしまうため、長期にわたっての服用は避けるべきだとされています。また、月経中や妊娠中、授乳中の女性は服用を避けるように言われています。
小腸刺激剤
小腸刺激剤としてはヒマシ油がよく知られています。小腸の運動を高めることで便秘の解消を目指しますが、痙攣性便秘の人が服用することは禁止されています。
また、月経時や妊娠中の女性が服用することも禁止されています。副作用としては、腹痛やおう吐、胸やけや発疹の可能性が指摘されています。
直腸刺激剤
直腸刺激剤は、いわゆる「坐薬」と呼ばれるタイプの便秘薬です。坐薬には大きく分けて、ビサコジル坐薬と炭酸水素ナトリウム配合坐薬の2種類があります。
ビサコジル坐薬は直腸の粘膜を直接刺激することによって、便意を促すことで便秘の解消を目指します。ただし、月経中や妊娠中、授乳中の女性の他、痔疾患を持っている人の服用は禁止されています。
炭酸水素ナトリウム配合坐薬は、直腸内で炭酸ガスを発生することによって便意を生じさせ、それによって便秘の解消を目指すタイプの便秘薬です。副作用としては、下腹部の痛みや残便感、腸への刺激感などがあげられています。
便秘薬その3・その他
主な便秘薬は以上に紹介したとおりですが、その他にも副交感神経刺激材や浣腸剤といった便秘薬もあります。
副交感神経刺激剤
副交感神経刺激剤としては、臭化ネオスチグミンがあげられています。主に弛緩性便秘の解消を目的として用いられ、消化管の機能を向上させることで便秘を解消します。
浣腸剤
薬用せっけんやグリセリンなどで作られた浣腸剤も、便秘の治療薬として用いられます。固くなった便を軟らかくし、便の表面を滑らかにすることで排便しやすい状態へと導きます。
主に弛緩性便秘や直腸性便秘を改善する目的で用いられますが、頻繁に使用すると習慣性に移行してしまうため、連用は避けるべきだとされています。また、妊婦さんの使用は禁止されています。
まずは診断をうけましょう
今回の記事では便秘薬について紹介しました。便秘薬にもいろいろあって、便秘の種類によっては、利用することでかえって便秘が悪化するケースもあるということでした。
便秘に悩まされている女性は多いと思いますが、たかが便秘と甘く考えず、自分の便秘がどのタイプの便秘なのかを病院で見てもらい、自分の便秘のタイプに合った便秘薬を利用することが重要ですよ。