タバコを吸う習慣のある人にとって、ホワイトングをしているときにタバコを吸えるのかどうかというのは重要な問題ですよね。ホワイトニング中にタバコを吸うと、せっかく白くなった歯がまた黄ばんでしまうのではないかと心配なことと思います。今回の記事では、ホワイトニングとタバコとの関係を詳しく解説していきたいと思います。
CONTENTS
歯についての基本知識
ホワイトニングとタバコとの関係について説明する前に、まずは歯についての基礎知識を紹介したいと思います。歯について詳しく知ることによって、ホワイトニングとタバコとの関係が理解しやすくなると思います。
歯の構造
歯の構造について詳しく調べるということは、一般的にあまりないのではないでしょうか。歯は大きく分けると、歯ぐきからのぞいている「歯冠部」と、歯冠部を支えている「歯根部」とに分類されます。
厳密に言うと、解剖学上の定義と臨床上の定義は異なっているのですが、本稿では便宜上、歯ぐきの上に見えている部分を歯冠部、歯ぐきの中にある見えない部分のことを歯根部として話を進めていきたいと思います。
いわゆる「歯」と呼ばれるものは、4つの組織から構成されています。それは、エナメル質と象牙質、セメント質と歯髄(しずい)です。
エナメル質は歯冠部を覆っている組織で、人体の中でもっとも固い組織としても知られています。エナメル質は透明感のある白色をしています。
象牙質はエナメル質の下にある層で、歯の大部分がこの象牙質によって構成されています。エナメル質と比べると比較的軟らかいため、虫歯が象牙質にまで及んだ場合、虫歯が急速に悪化してしまうことが分かっています。
セメント質は歯根の表面を覆っている組織で、象牙質よりもさらにやわらかい組織となっています。そのため、歯周病などが原因で歯ぐきが痩せたり、歯ぐきの位置が下がったりすると、やはり虫歯になりやすくなってしまいます。
歯髄は歯医者さんなどでよくいわれるところの「神経」を指します。虫歯になって歯が痛いと感じるときには、この歯髄が反応しているのです。
歯の役割
歯の役割は、第一義的には食べ物を噛んで細かく砕くことにあります。ただ、歯の役割はそれだけにとどまりません。
たとえば、人体の中でもっとも固い組織であるエナメル質には、熱や電気などの刺激を通しにくいという特徴があります。そのため、歯を外部の刺激から守ってくれる働きを有しているのです。
象牙質にはわずかではあるものの、歯を再生させる働きがあるということです。セメント質は、歯根膜といって、歯ぐきの中にある歯を覆う働きがあります。
歯髄には、痛みを感じる神経があるだけでなく、末梢の動脈や静脈なども走っています。血液には酸素と栄養を身体の各部に送る働きがあるので、歯髄にも歯への栄養供給を担う働きがあるのです。
黄ばみの原因
歯の構造について簡単にですが説明したところで、次に歯がなぜ黄ばんでしまうのか、その原因について説明しておきたいと思います。
①もともとの黄ばみ
歯はそもそも黄ばんでいるものです。というのも、歯の表面にあるエナメル質自体は透明感のある白色をしているのですが、歯の大部分を構成している象牙質はもともと黄色っぽい色をしているからです。
象牙質の色の濃さには個人差があるため、もともと象牙質の黄色みが強いような人の場合、エナメル質から象牙質の黄色が透けて見えてしまうという訳なのです。
また、象牙質の色は加齢とともに濃くなることが分かっています。そのため、お年寄りの歯は黄色っぽく見える訳です。その他にも、歯の磨きすぎによってエナメル質の層が薄くなることで、象牙質の黄色が目立ってしまうこともあります。
日本人の場合タバコを吸っている人でも元々の黄ばみが原因で黄ばんでいることがほとんどです。上の写真の方のようにタバコを全く吸わなくても歯は黄ばんでいます。
②タバコの着色による色
歯が黄ばんでしまう原因としては、今回のテーマであるタバコもあげられます。タバコを吸うと歯の表面にタール(いわゆるヤニ)が付着してしまい、それによって歯が黄色く見えてしまうのです。
タバコを吸うことによって歯の表面に付着したタールは、「ステイン」と呼ばれており、いったん付着してしまうと通常の歯磨きではなかなか落ちにくいことが分かっています。
上の写真で言うと下の歯と歯の間についている茶色いものがタバコによるステインになります。
ここまでで元々もっている黄ばみとタバコによる黄ばみが違うことがお分かりいただけたでしょうか?
タバコを吸うことでの歯への悪影響
歯の黄ばんでしまう原因はさまざまですが、たばこを吸うこともその原因の1つだということが分かって頂けたことと思います。ところで、タバコを吸うと、歯にはどのような悪影響があるのでしょうか。
歯に着色(ヤニ)がつく
タバコを吸うことによる歯への悪影響でもっとも分かりやすいのが、歯の表面にヤニ(タール)が付着することによって、歯が黄ばんでしまうことと言えるでしょう。
笑顔からのぞく白い歯は美しいものですが、黄色い歯がのぞくと人によっては嫌悪感を抱くこともあるでしょう。また、自分の歯の黄色っぽいことがコンプレックスにつながる可能性もあります。
歯周病の悪化
日本臨床歯周病学会の調べによると、タバコを吸うことによって歯周病のリスクの高まることが分かっているそうです。統計によると、1日に10本のタバコを吸う人は、非喫煙者の5.4倍も歯周病になりやすくなるとされています。
なぜそのようなことが起こるかというと、タバコの煙には一酸化炭素が含まれているからです。一酸化炭素によって酸素の供給が断たれることによって、歯肉の栄養状態が低下してしまうのです。
また、タバコの主成分であるニコチンはある種の「神経毒」であり、血管を収縮させる働きがあります。それによって血液の循環が悪くなると、やはり歯周の栄養状態が低下し、結果として歯周病になりやすくなってしまうのです。
実際に、たばこを吸う人は歯周病になりやすいだけでなく、歯周病が悪化するスピードも速いということです。また、非喫煙者と比較すると治療効果も上がりにくいということです。
口臭
タバコを吸うことによる歯への悪影響としては、タール(ヤニ)が歯の表面に付着することによって、悪臭を放つということもあげられます。
ただ、タバコを吸ったときの臭いは一時的なもので、時間の経過とともに自然に消えてなくなるとされています。とは言うものの、タバコの臭いが衣服に付着するので、非喫煙者にとっては不愉快に感じることも多いようです。
ホワイトニングのメカニズム
次に、今回のもう1つのメインテーマであるホワイトニングについて見ていきたいと思います。ホワイトニングにはどのような種類があり、どんなメカニズムで歯を白くしてくれるのでしょうか。
オフィスホワイトニング
もっとも一般的なホワイトニングの1つに、オフィスホワイトニングと呼ばれる方法があります。オフィスホワイトニングは、デンタルオフィス=歯科医院でおこなうホワイトニングのことを意味しています。
オフィスホワイトニングで用いられるホワイトニング剤には、歯を効率よく白くすることの可能な過酸化水素などが含まれていますが、過酸化水素は民間では扱うことができません。
そのため、オフィスホワイトニングは国家資格を有している医師か、歯科衛生士によっておこなわれる必要があります。また、その分だけ安全性の高いホワイトニングだということも可能です。
オフィスホワイトニングはホワイトニング剤を歯に塗って終わりというのではなく、ホワイトニング剤を塗った場所に特殊な光を照射します。
それによって過酸化水素が活性化し、歯の表面を透明感のある白色にしてくれるのです。通常はホワイトニング剤の塗布と光の照射を数回繰り返すことで効果をアップしていきます。
オフィスホワイトニングでの白くなるメカニズムはエナメル質を曇りガラスのようにして中にある黄色い象牙質を見えにくくすることで白く見せています。
オフィスホワイトニングのメリットは、1度の施術で明らかにホワイトニング効果が実感できるという点にあります。治療時間自体も問診やアフターケアを合わせて1時間程度と、比較的短時間でホワイトニングを実現することが可能となっています。
オフィスホワイトニングのデメリットとしては、定期的にメンテナンスをおこなわない場合、色が元に戻ってしまうということがあげられます。
しっかりとオフィスホワイトニングをおこなった場合、半年から1年程度は効果が持続するということですが、いつまでも歯を白く保つためには、定期的にケアする必要があります。
ホームホワイトニング
ホームホワイトニングは読んで字のごとく、自宅でおこなうタイプのホワイトニングを意味します。個人に合わせたマウスピースにホワイトニング剤を塗布し、それを歯に装着することによって、徐々に歯を白くしていきます。
オフィスホワイトニングとは異なり、効果が出るまでに時間がかかるというデメリットはあるのですが、色戻りのリスクが低いというメリットもあります。
ホームホワイトニングのメカニズムは内部の黄色い象牙質を白くしていくことによって段々白い歯にしていくことです。根本原因を改善できるので色持ちが良いということです。
ポリリン酸ホワイトニング(セルフホワイトニング)
ポリリン酸ホワイトニングは、オフィスホワイトニングとは異なり、医薬品である過酸化水素を使わないホワイトニングのことを言います。
ポリリン酸は口腔化粧品に属するホワイトニング剤で、基本的に表面についている汚れを落とす効果があります。つまり冒頭で話した黄ばみの原因のうちタバコによるステインを落とす効果はありますが、もともとの黄ばみを改善する効果はありません。
実はホワイトニング中も喫煙OK!
タバコを吸う習慣のある人にとって、ホワイトニング中に喫煙をしてもいいのかどうかは気になるところだと思います。実は、ホワイトニング中であっても、あることに気をつけさえすれば喫煙も可能だということです。
ホワイトニング中は基本的に喫煙OK
オフィスホワイトニングをおこなっている場合、施術後サロンの指示による時間をあければ、喫煙をしてもかまわないということです。
というのも、オフィスホワイトニングをおこなった直後は、歯の表面を保護してくれているペリクルという薄い膜がなくなってしまっているためです。
ペリクルがない状態でタバコを吸ってしまうと、歯に色がつきやすくなってしまいます。そのため歯科医院ではホワイトニング後に飲食の制限時間を設けます。制限時間が経った後に喫煙をするようにしましょう。
また、ホームホワイトニングをおこなっている場合も、基本的に喫煙をしても構いません。そもそも、ホワイトニングとは歯そのものを白くするためのものなので、表面に付着するヤニは関係ありません。
ホワイトニングをおこないながら、しっかりと歯磨きをするように心がければ、喫煙をしたからと言ってすぐに黄ばんでしまうようなことはありません。
もし気になるようであればホワイトニング効果をさらに高めてくれる歯磨き粉などを併せて使うことでタバコによる着色を防ぐことができます。
ダウンタイム(制限時間)が少ないサロンを選ぶ
ホワイトニングに限った話ではありませんが、ダウンタイムとは施術をおこなってから、回復するまでの期間のことを意味しています。
ホワイトニングとタバコとの関係でいうなら、ホワイトニングをおこなってからタバコを吸えるまでの期間が、ダウンタイムということになります。
一般的にホワイトニングをおこなったあとには、食事や喫煙の制限時間が設けられることとなります。ただ、ホワイトニング法によっては、歯質自体を改善することでダウンタイムを短くすることが可能なものもあります。
もし、ホワイトニング後にどうしてもタバコを吸いたいというのであれば、ダウンタイムが短くて済む施術をおこなっている歯科医院を選ぶようにするとよいでしょう。
クリーニングでヤニを落とす
ホワイトニングで歯を白くすることとクリーニングでヤニを落とすことは全く別物です。
ヤニで黄ばんだ歯は基本的に歯のクリーニングでキレイにすることが出来ます。タバコ吸ってヤニが付きやすいようであれば定期的にクリーニングをすることをオススメします。
ヤニをつきにくくする方法
基本的に、タバコを吸うことによってホワイトニングの効果自体がなくなってしまうようなことはありませんが、それでも喫煙によって歯に色がつきやすくなることに変わりはありません。では、ヤニをつきにくくするにはどうしたらよいのでしょうか。
研磨剤が少ない歯磨き粉を使用
ヤニをつきにくくする方法としては、研磨剤の含有量が少ない歯磨き粉を用いて歯を磨くという方法があります。歯磨き粉には多かれ少なかれ研磨剤が入っているものですが、研磨剤を大量に含んだ歯磨き粉で歯を磨いてしまうと、歯の表面を傷つけてしまうこととなります。
歯の表面が傷ついてしまうと、その間にヤニが付着しやすくなってしまうのです。また、研磨剤によってエナメル質がはがれおちると、黄色い象牙質が透けて見えてしまうことにもつながります。
フッ素で傷を修復する
歯にヤニをつきにくくするには、フッ素を用いて溶けたエナメル質を修復するという手もあります。虫歯菌の活動を抑える働きもあるので、フッ素剤配合の歯磨き粉を用いるとよいでしょう。
歯を光沢にしてヤニを跳ね返す
オフィスホワイトニングをおこなう際には、最後にフッ素入りの歯磨き粉を用いて歯の表面をツルツルに磨きあげます。それによって、汚れやヤニが付着しにくくなるという訳なのです。そのため、歯のツルツル状態を維持するよう心がけましょう。
タバコを吸った後は水を飲む
簡単なことなのでぜひ行っていただきたいのが水を飲むこと。タバコを吸ったあとに水で軽く口をゆすぐことで、ヤニが付着しにくくなります。
電子タバコに変える
タールが含まれていない電子タバコに変えるだけでタバコによる着色がつくにくくなった方を大勢みてきました。もし変えられるようであれば試して見る価値はあると思います。
ホワイトニングと上手く付き合っていきましょう!
歯が黄ばんでしまう原因の1つであるタバコですが、愛煙家にとってはホワイトニング中でもタバコを吸いたいものですよね。今回はホワイトニングとタバコとの関係について解説しましたが、しっかりとケアすれば、ホワイトニング中であっても喫煙は可能ということでした。今回の記事を参考に、あなたに合ったホワイトニング法を見つけてくださいね。