子供の頃に服用した医薬品がきっかけで、テトラサイクリン歯になったという方、いらっしゃいませんか。そのせいで、歯の変色に悩まされている方もいらっしゃることと思います。
でも実は、正しいホワイトニングで歯を白くすることが可能なのです。今回は、どのようなホワイトニングをすることで、テトラサイクリン歯を白くすることが可能となのかを解説していきたいと思います。
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テトラサイクリン歯とは?
テトラサイクリン歯に対するホワイトニングの正しいやり方などについて説明する前に、まずは、そもそもテトラサイクリン歯とはどのような歯なのかについて知っておきましょう。
テトラサイクリン系の薬の影響
テトラサイクリン歯は簡単に言うと、テトラサイクリン系の医薬品を歯の成長段階にある乳幼児や児童が服用することによって、変色してしまった歯のことを指します。
テトラサイクリンは抗生物質の一種で、特にタンパク質の合成を抑制して病原体である微生物の増殖を阻害する目的があります。また、そのようなテトラサイクリン系の医薬品を総称して、テトラサイクリンと呼んでいるのです。
テトラサイクリン系の医薬品としては、ミノサイクリンやクロールテトラサイクリン、ドキシサイクリンといったものがよく知られています。
こういったテトラサイクリン系の医薬品は、1960年代から1970年代には一般的に用いられていたため、現在40代以降の人にはそれほど珍しい現象ではありません。
現在ではテトラサイクリン系の医薬品によって歯の変色を招くことが分かっているため、テトラサイクリン系の抗生物質が処方されるようなことは少なくなってきています。
とはいうものの、歯の色が変色するリスクと治療効果とを天秤に掛けて、治療上の有益性が優先されるような場合には、テトラサイクリン系の抗生物質が処方されるケースもあります。
原因
歯の成長段階にある乳幼児や児童がテトラサイクリン系の医薬品を服用した場合、歯の象牙質に着色を起こしてしまったり、エナメル質が正常に形成されなかったりすることがあります。
歯の表面はエナメル質で覆われており、その内側に象牙質があります。エナメル質は白色をしており、象牙質は黄色がかっているのが特徴です。
ところが、テトラサイクリン系の医薬品を服用することでエナメル質の形成が不十分になってしまうと、その下にある象牙質の黄色い色が目立ってしまうこととなるのです。
また、テトラサイクリン系の医薬品を服用することで、象牙質自体の色が通常よりも濃くなることがあります。それによって、象牙質が透けて見えることで歯が黄色く見えてしまう訳です。
あと、テトラサイクリン系の医薬品には蛍光粒子が含まれているため、歯の成長期にテトラサイクリン系の医薬品を服用すると、蛍光粒子が歯質にとりこまれることで、そもそも暗褐色の歯が生えてくることもあります。
さらに、テトラサイクリン系の医薬品は紫外線に反応することで、歯に含まれているカルシウムが変色し、それによって歯の色が黄色っぽくなったり黒っぽくなったりするのです。
これは、歯に含まれているカルシウムとテトラサイクリンが結合して歯に沈着し、その結合物が紫外線によって酸化することが原因だとされています。
レベル
一口にテトラサイクリン歯といっても、そのレベルはさまざまです。ホワイトニングによって改善できるレベルのテトラサイクリン歯もあれば、セラミック治療をおこなう必要のあるテトラサイクリン歯もあります。
テトラサイクリン歯は一般的に第1度から第4度まで、4つの段階に分類されています。軽度の変色が第1度で、色が濃くなるにつれて第2度、第3度となっていき、もっとも変色の度合いがひどいテトラサイクリン歯を第4度としています。
テトラサイクリン歯に対してのホワイトニングの作用と効果
テトラサイクリン歯とはどのような歯なのか、大まかなところを理解して頂けたことと思います。それでは次に、テトラサイクリン歯に対しては、どのようなホワイトニングの方法があるのでしょうか。
また、テトラサイクリン歯のレベルによって、ホワイトニングの効果にどのような違いが表れるのかについても見ていきたいと思います。
デュアルホワイトニング
テトラサイクリン歯に限った話ではないのですが、ホワイトニングをおこなう際にデュアルホワイトニングと呼ばれる施術法があります。
デュアルホワイトニングは、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの両方を並行しておこなうホワイトニングのことを言います。
ホームホワイトニングはその名の通り、自宅でおこなうホワイトニングのことを言います。特殊なマウスピースにホワイトニング剤を塗布し、それによって歯を白くすることを目的としています。
オフィスホワイトニングのメリットは、短時間で目に見える効果が得られるという点にあります。デメリットとしては、ホワイトニングの持続期間が短い、ということがあげられます。
ホームホワイトニングはオフィスホワイトニングとは反対に、効果が表れるまで根気よく続けなければならないというデメリットがあります。
ただ、根気よく継続的にホームホワイトニングを続けることで白くなった歯は、オフィスホワイトニングで白くなった歯よりも効果が長持ちするというメリットがあります。
デュアルホワイトニングは、オフィスホワイトニングとホームホワイトニング双方の「いいとこ取り」をした治療法と言えます。
つまり、短期的な効果によってすぐに歯を白く見せることができ、さらに長期的な効果によって、歯の色戻りが少ないというメリットがあるわけなのです。
レベル別ホワイトニングの効果
一口にテトラサイクリン歯と言っても、その変色度合いはさまざまです。場合によっては、歯に横方向の縞模様がみられるようなケースもあります。
一般的には、第1度から第2度のテトラサイクリン歯であれば、ホワイトニングの効果が期待できるケースもあるということです。
テトラサイクリン歯も第3度になると、第1度や第2度の場合と比べた場合、長期間にわたる根気強いホワイトニングが要求されることとなります。
第4度にまで至ってしまったテトラサイクリン歯の場合、ホワイトニングの効果が出にくくなりますし、縞模様が出ているような場合だと、ホワイトニングによってかえって縞模様が目立ってしまう結果となる恐れもあります。
段階的に見ていくと、第1度=うすい茶色程度のテトラサイクリン歯であれば、歯科医院でおこなわれるオフィスホワイトニング程度でも標準的な歯の白さに近づけることが可能となっています。
次に、第2度=薄いグレーのテトラサイクリン歯の場合、ホワイトニングによって徐々に歯を白くしていくことが可能です。ただ、第1度のように標準的な白さにまで近付けることは困難です。
第2度のテトラサイクリン歯をホワイトニングによって改善する場合には、あくまでも現状よりも白くすることが可能であるといった認識が必要となります。
第3度=濃い茶色やグレーのテトラサイクリン歯の場合、かなり色が濃いため、ホワイトニングをおこなっても効果の実感が得られにくいというのが現実です。
もちろん、何もやらないよりはホワイトニングをおこなった方が、現状よりは歯を白く見せることが可能です。
また、第3度のテトラサイクリン歯の場合、オフィスホワイトニングだけでは効果があまり持続しないため、ホームホワイトニングも併せておこなうことが重要となります。
ただし、第3度のテトラサイクリン歯をホワイトニングする場合、仕上がりが不自然になってしまうリスクがあります。
第4度のテトラサイクリン歯の多くに、縞模様のような線の入っているケースがみられます。このようなテトラサイクリン歯をホワイトニングした場合、キレイになる部分とならない部分とに分かれてしまうことがあります。
そのため、ホワイトニングをおこなう前よりも、かえって縞模様が目立ってしまい、見た目が悪くなるリスクが高いということです。4度のテトラサイクリン歯の場合は、その他の手段を選択した方がよいでしょう。
注意点
テトラサイクリン歯に対しても、程度によってはホワイトニングが可能ということでしたが、いくつか注意点があります。それは以下のようなことです。
セルフホワイトニングで白くするのは難しい
ホワイトニングにもいくつかの種類があります。先ほど紹介したオフィスホワイトニングやホームホワイトニング、その2つを並行しておこなうデュアルホワイトニングなどがそうですが、中にはセルフホワイトニングという方法もあります。
セルフホワイトニングと聞くと、自分でやるホワイトニングだからホームホワイトニングと同じようなものではないかと考えてしまいそうですが、実際には全く別物です。
セルフホワイトニングは、セルフホワイトニングの専門店に足を運んで、そこで自分の手でホワイトニングをおこなうタイプのホワイトニングのことを指します。
実際のセルフホワイトニングの流れは、専門店でスタッフの話を聞いてから歯を磨き、開口器を自分で装着して歯にホワイトニング用のジェルを塗布し、特殊なライトをあてるといったものとなります。
セルフホワイトニングは医師がおこなうオフィスホワイトニングに比べて安価であり、気楽に取り組むことができるというメリットがあります。
ただ、歯科医院でおこなうホワイトニングは、ホワイトニング剤に過酸化水素などの漂白剤を使用していますが、医師ではないスタッフが常駐しているだけのセルフホワイトニングの場合、過酸化水素を用いることはできません。
その代りにポリリン酸やメタリン酸といった市販で手に入る洗剤成分を用いているわけです。また、医師の資格がない人間が他人の口腔に触れることは禁止されているため、自分でホワイトニングをするという手法をとっているのです。
セルフホワイトニングの問題点は、ホワイトニング効果が弱いということです。セルフホワイトニングをおこなう際、ホワイトニング剤を塗布した後に特殊なライトを照射しますが、その効果自体が疑問なのです。
歯科医院でおこなわれるオフィスホワイトニングの場合は、特殊なライトを照射すると、過酸化水素を含んだホワイトニング剤に反応して、歯の表面に光沢や透明感を生み出すことが可能となっています。
ところが、セルフホワイトニングで用いられる市販のポリリン酸やメタリン酸にはそのような効果はありません。そのため、ホワイトニング剤で歯の表面を洗浄してキレイにするだけの効果しか得られないのです。
特に、テトラサイクリン歯のように歯の色が変色してしまっているような場合、セルフホワイトニングではあまり効果が期待できないといわざるを得ません。
通常の歯よりは時間がかかる
テトラサイクリン歯は、単に汚れが付着して黄色くなっている訳ではありません。歯自体が変色してしまっているため、ホワイトニングをおこなっても通常の歯よりは時間がかかることを覚悟する必要があります。
「歯を白くしたいけれど、歯を削るのはイヤ」というような場合は、根気よくホワイトニングに取り組む必要があります。
ホームホワイトニングをしっかり
ホワイトニングにはいろいろな方法がありますが、ホームホワイトニングは効果こそ表れにくいものの、いったん白くなってしまえばオフィスホワイトニングよりも効果が長持ちするという特徴があります。
そのため、テトラサイクリン歯の場合も自宅でコツコツとホームホワイトニングに取り組むことが重要となります。
重度のテトラサイクリン歯の場合は難しい
テトラサイクリン歯にも、第1度から第4度までレベルがあるということでした。上の写真(下の歯)のような第4度のテトラサイクリン歯になると、歯に縞模様のようなものや濃いグラデーションができてしまうため、ホワイトニングだけで対処するのが難しいケースもあります。そのような場合、歯を白くするにはどうしたらいいのでしょうか?
基本的にはセラミックなどを推奨
ホワイトニングによって歯を白くするのが難しいタイプのテトラサイクリン歯に対しては、基本的にセラミック治療が推奨されることとなります。
ただ、テトラサイクリン歯は、歯が変色しているだけで、歯そのものは虫歯にでもなっていない限り健康です。セラミック治療をおこなう場合には多かれ少なかれ健康な歯を削ることとなるため、慎重に検討する必要があります。
①ラミネートベニア
ラミネートベニアは、歯の表面を薄く削って、そこにセラミックでできたベニア(板)を張り付けるという治療法のことを言います。
ホワイトニングの効果が出にくいテトラサイクリン歯に対しては、かつては歯の全周を削ってクラウンをかぶせる手法が一般的でしたが、医療技術の向上により、歯の表面だけを削って治療することが可能となってきたのです。
健康な歯を削る量を減らすことが可能であり、また、治療にかかる時間も短いというメリットがあります。ただし、保険適用外なので全額自己負担となります。
②クラウン
クラウンとは、歯の全周を削ってクラウン(王冠)のようにセラミックをかぶせる治療法のことを指します。
虫歯の治療で被せ物をしたことがあるという人もいらっしゃると思いますが、審美目的でセラミックを被せるという治療も、やはり自由診療でおこなわれています。
一度デュアルホワイトニングで試してみる
テトラサイクリン歯というと、歯の色だけが取り上げられがちですが、先ほども少しふれたように、歯そのものには異常がなく健康な状態で生えてきます。
セラミック治療をおこなうと確実に歯を白くすることが可能ですが、どのような治療をおこなうにせよ、健康な歯を削ることにほかなりません。
医師の中にも、健康な歯を削るということは歯の寿命を縮めることになるという観点から、まずはセラミック治療をおこなう前にホワイトニングをおこなうことを奨める人もいます。
セラミック治療は最後の手段として取っておいて、まずはホワイトニング、特に効果の高いとされるデュアルホワイトニングを試すことから始めるとよいでしょう。
テトラサイクリン歯をキレイにするには
テトラサイクリン歯とホワイトングとの関係について見てきましたが、いかがだったでしょう。本文中にも述べたように、テトラサイクリン歯は変色してしまっているだけで、健康な歯であるということを忘れてはいけません。
見た目を気にしすぎるあまり、歯の寿命を縮めてしまっては本末転倒です。まずはホワイトニングでどこまで白くなるのかを試したうえで、どうしようもなければセラミック治療を検討するのが賢明と言えそうです。