糖尿病にかかってしまうと様々な合併症のリスクが高くなることは有名です。さらに糖尿病になると体臭や口臭もきつくなることがあるのです。
今回は糖尿病にかかった時の体臭と口臭の原因、さらに口臭にまつわる怖い病気についてご紹介していきます。
糖尿病のなかには生活習慣と深く関わるものもあるので、糖尿病は誰もがかかる可能性のある病気です。糖尿病の方はもちろん、そうでない方もぜひ読んでみてください。
糖尿病による体臭や口臭
糖尿病は全身にその影響が及ぶ病気です。本来されるべき処理がなされないと、人のからだは異常なにおいを発することがあります。
糖尿病とは
糖尿病にはいくつか種類があります。膵臓の異常で起こる1型、生活習慣や遺伝が要因な2型、その他の要因(妊娠や薬など)があります。
日本人で圧倒的に多いのは2型で、遺伝で発症することもありますが、ストレスや不規則な生活などが要因になることも多いので、生活習慣病とも呼ばれますね。
糖尿病は「インスリン」というホルモンの働きが悪くなったり、分泌がされなくなったりすることで発症します。インスリンは血液中の糖分(血糖)からエネルギーを作り出す働きや、摂取した血糖を必要なぶんだけ体内に取り込む働きをしています。インスリンがうまく働かなくなると全身のエネルギーが不足します。また、必要以上の血糖が血液に乗って全身に運ばれることで血糖値が上がります。
全身のエネルギーが不足した状態は良くないということは誰でもわかると思いますが、血糖値が高いとどのような問題が起こるのでしょうか。
血糖値が高い=「血液中に必要以上の血糖がある状態」です。
血管を分厚く修復したら、当然血液が流れる量が制限されますよね。心臓や脳に十分な血液が行き渡らなくなったらどうなるかは想像に難くありません。
手足の先の毛細血管がそうなってしまったらどうなるでしょうか?ソルビトールは神経を傷つけることもあるので、痛みにすら気づかぬうちに血が通わなくなって手足が壊死し、切断を余儀なくされる恐ろしいケースもあるのです。
ケトン体のアセトン臭
インスリンが正常に働かなくなると、血糖をうまくエネルギーに変えられないため、わたしたちのからだは血糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーとして使おうとします。
脂肪を分解するとケトン体という物質が血液中に増えますが、このケトン体から発せられる「アセトン臭」は甘ったるいような、果物が腐ったような独特なにおいがします。
ケトン体が血液に乗って全身に回ると、こんな独特な体臭になってしまうというわけです。
唾液の減少
糖尿病になると口が乾きやすくなります。血糖値が上がり、異常にのどが渇く。そうするとたくさん水分を取るようになり、その結果体内の水分が尿としてたくさん排出されるためです。
体内の水分が排出されてしまうと、水分が主成分の唾液の分泌も減少してしまいます。
歯周病と糖尿病の関係
歯周病と糖尿病に関係があるって、なんだか意外な感じがしますよね。しかし歯周病の治療で血糖値が下がることもあるくらい、両者には密接な関係があるのです。
歯周病から糖尿病への影響
歯周病になると、わたしたちの体内ではからだを守るための化学物質が作られます。ところがこの歯周病菌と戦うために作られた化学物質は、インスリンの分泌を抑えるという副作用があります。
インスリンの分泌が少ないがために糖尿病になってしまったのに、歯周病菌の出現によってさらにインスリンが減ってしまうのです。
糖尿病から歯周病への影響
糖尿病にかかっていると、本来であれば止められたはずの歯周病の進行を促してしまう可能性があります。
糖尿病はからだを守る機能も低下させるので、侵入してきた歯周病菌へのガードが甘くなってしまいます。そして、糖尿病によって血管が弱くなると血の巡りや傷の治りが悪くなり、虫歯に侵食された部分の修復が追いつかなくなってしまうのです。
歯周病の口臭
歯周病は歯の骨や歯ぐきが溶けて歯を支えることができなくなる病気です。歯周病になった場合は、歯周病菌によってきつい口臭が発生します。
なぜなら、歯周病菌は口の中のタンパク質を分解する時にくさいにおいのするガスを放つからです。実際に歯周病患者の呼気を調査するときついにおいのするガスである「メチルメルカプタン」が健常者よりも多く検知されることがわかっています。
歯周病の症状の1つに、歯槽膿漏(しそうのうろう)がありますが、歯槽膿漏にかかると膿のにおいが口臭に混ざるので遠くからでも分かるくらいの強烈なにおいがすることもあります。
歯周病の身体への悪影響
糖尿病と歯周病の関係についてここまでお伝えしましたが、歯周病は口腔内だけにとどまらず、からだ全体に様々な悪影響をもたらします。
糖尿病の悪化
2-1で少し触れましたが、歯周病にかかると糖尿病が悪化する可能性があります。以下、糖尿病患者が歯周病になった場合体にどんな反応が起こるか、という流れを箇条書きにしました。
- 歯周病になる
- 歯周病菌と戦うために作られた化学物質によってインスリンの分泌が少なくなる
- インスリンの分泌が少なくなり、糖尿病が悪化してバリアが弱くなる
- 糖尿病が悪化すると、歯周病菌に感染しやすくなる
歯周病を根本的に直さない限り、②〜④を繰り返し、どんどん糖尿病が悪化していきます。
糖尿病が悪化すると血管もどんどん狭くなり、十分な血の巡りと傷の治癒が得られなくなるために、進行してしまった歯周病も治りづらくなります。そしてその歯周病によってまたインスリンが不足し…と負のループが拡大してしまいます。
歯周病は全身疾患の原因になる
歯周病が糖尿病の原因になるように、歯周病になると他の全身疾患にもかかりやすくなります。歯周病の菌は歯茎から血管に移動し、血液に乗って全身のあらゆる場所で毒素を撒き散らすからです。
歯周病菌は菌自体が死んでも菌が持つ毒素は消滅しないので、侵入自体を断固阻止する必要があります。
①血管がふさがることで発症する深刻な病気
歯周病は、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症の原因になります。歯周病菌は血管の中に障害物(血栓)を作り、心臓や脳への血液が運ばれるのを妨ぎます。
特に脳梗塞は歯周病に感染した人はそうでない人の2.8倍も脳梗塞になりやすいのです。
②関節リウマチ
一般的に「リウマチ」と呼ばれているものは関節リウマチのことを指します。からだを守るための機能が異常をきたし、自身を敵とみなして攻撃することで関節が動かせなくなったり、変形する病気です。
歯周病菌のひとつであるジンジバリス菌はこの病気を発症・進行させる毒素を持っていることが明らかになっています。リウマチの患者に歯周病を併発している人が多いことも昔から医療の現場では認知されてきたことなのですが、近年の研究によって関連性が示されました。
③口腔がん
歯周病菌の中には、アセトアルデヒドを生産する菌がいますがこれががんの原因になることがあります。このアセトアルデヒドは細胞の突然変異を引き起こすことが多く、周囲の環境に関係なく腫瘍をつくることがありますが、この腫瘍はがんの一種なのです。
④誤嚥性(ごえんせい)肺炎
高齢になって、口から気管への異物の侵入を止める機能が衰えると、食事の時に歯周病菌を飲み込んでしまうことがあります。そこでむせたりすると歯周病菌は器官や肺に侵入して肺炎を起こすことがあります。
QOLの低下
最初のほうでお伝えしましたが、歯周病は歯の骨や歯ぐきが溶けて歯を支えることができなくなる病気です。進行すると歯を抜かざるを得なくなります。
実際に多くの歯を抜くことになった場合、入れ歯を使用することになるかもしれません。そうなると、当然たべものを噛む時に違和感がありますし、健康な歯であれば行う必要のなかった毎日の入れ歯のケアもすることになります。
さらに歯周病によって膿が唾液に混ざると味覚が阻害されることがあり、さらに食事を楽しめなくなります。
歯周病によって口臭もきつくなるので、家族や友人にそれを指摘されたり、いつも口臭を気にして過ごすことになるかもしれません。
歯周病にかかると、QOL(クオリティーオブライフ=人生の質)が低くなる可能性が高いですね。
歯周病の予防
糖尿病もそうですが、歯周病もとても恐ろしい病気ということをお分かりいただけたかと思います。せっかくの人生、最後まで健康に過ごしたいですよね。
歯周病は予防ができる病気です。下の記事に歯周病の予防方法を詳しくまとめていますので、読んで是非今日から歯周病への意識を高めてくださいね。
身体の異常を知らせる体臭
1-2.で、糖尿病になると独特の甘酸っぱいにおいが体臭になることをお伝えしました。実は他の病気でも体臭が変わることがあるんです。「◯◯のにおいがするよ」と誰かに言われたら病気を疑ってみてください。
肝臓の不調
肝機能が低下するとアンモニア、カビ、ドブのようなにおいがします。肝臓は体内の毒素を解毒する臓器で、普段私たちの体から食べたもののにおいがしないのは肝臓がにおいを処理しているからです。
しかし肝臓を酷使してその働きが鈍ると十分に解毒ができず、残った毒素が体臭となって現れてしまうのです。
腎臓の不調
腎臓は血液から毒素や老廃物を取り除き、それらの不要なものを尿として体外に排出する器官です。この腎臓の機能が低下=尿が出にくくなると、毒素や老廃物を体内に抱え込むことになりますよね。
するとその一部が汗とともに体外に出るので体臭が尿臭、つまりアンモニアのようなにおいになってしまうのです。
消化器系の不調
消化器系の臓器は胃や腸のことを指します。これらの臓器に異常があると、卵の腐乱臭のようなにおい、生臭いにおい、便臭(便のようなにおい)が体臭となって現れることがあります。
何らかの理由で胃腸の機能が弱くなると、食べたものがちゃんと消化吸収されずに胃腸の中で発酵を始めます。そのときに強烈なにおいのガスが出るのですが、このガスは血液に乗って全身に運ばれた結果、体臭になってしまうのです。
胃酸が逆流する「逆流性食道炎」の場合は胃酸のにおい、つまりすっぱいにおいがします。
糖尿病の予防
糖尿病に予防のロジックは単純です。糖尿病は血糖値の上昇による疾患なので、血糖値が上がりにくい体づくりや、血糖値を上げないようにする努力をすればよいのです。
過剰な飲食の制限
食べ過ぎや飲み過ぎは血糖値を高める大きな1つの要因です。
糖尿病の予防に限らないことですが、食べ過ぎを控えましょう。ストレスが溜まって常に口に何かを入れたくなる状態が続いていたら危険です。
また、不規則な食生活もインスリンの正常な分泌を妨げます。休日は昼夜逆転したり、朝食を抜く日があったりしませんか?そのような生活は、胃腸だけではなく膵臓にも負担をかけてしまうことを肝に命じておいてください。
定期的な運動
血糖値を抑えるためにはインスリンの働きが必須ですが、肥満だとインスリンのはたらきが鈍くなり血糖値が上がりやすくなります。これは、内臓脂肪が増えるとインスリンの働きを阻害する物質が体内で分泌されるためです。
見た目はそこまで太っていなくとも、過剰な脂肪が内臓にびっしりついていることがあります。「私はそこまで太っていないから大丈夫」と思わずに、定期的な運動で、血糖値が上がりにくい体を作りましょう。
ウォーキングなどの有酸素運動が有効だと言われているので、仕事の帰りに一駅分歩くことを始めてみてはいかがでしょうか。
質の高い睡眠
一年以上不眠症に悩まされている人は、健康な人に比べて糖尿病を発症するリスクが1.7倍にものぼるという研究結果があります。
寝不足や質の悪い睡眠が続くと、交感神経が優位になります。これによって血糖値が上昇したり、インスリンの働きが弱まってしまうのです。
食生活と運動が病気の予防に関わっているのは何となく想像できますが、睡眠も重要なのですね。結局、生き物として当たり前のことをきちんとこなしていくことが健康へのいちばんの近道なのでしょう。
1つの病気が他の病気も誘発してしまうことを知る
今回は糖尿病を起点に、それに伴う口臭や歯周病などの併発しやすい病気、病気にまつわる体臭などについて見てきました。
いつもと違うにおいが自分からしたら要注意、糖尿病になったら歯周病に注意で逆もまた然りです。その前にそんな病気にならないよう、日頃から自分の体を大切にしてくださいね。