日本でもホワイトニングをおこなう人が増えてきていますが、ネックとなるのが費用です。歯科医院や専門のサロンでホワイトニングをすると、ある程度の金額が必要となります。
ところが、市販のホワイトニング用歯磨き粉であれば、明らかに費用を安く抑えることが可能です。でも、市販の歯磨き粉ではたしてホワイトニング効果は得られるのでしょうか。
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黄ばみの種類は大きく分けて2つ
市販のホワイトニング用歯磨き粉でホワイトニングが可能かどうかについて解説する前に、まずは、そもそもなぜ歯が黄ばんでしまうのかについて原因を知っておくことが重要です。歯の黄ばむ原因は大きく分けると以下の2つに分類可能です。
象牙質の色
私たちが「歯」という場合、一般的には歯ぐきより上にのぞいている部分=「歯冠部」を指すケースがほとんどです。そして、歯冠部はエナメル質と象牙質、歯髄から構成されています。
エナメル質は歯のもっとも表面にある部分で、人体の中でもっとも固い組織としても知られています。その硬さは、鉄をもしのぐといわれているほどです。エナメル質は通常、透明感のある白色をしています。
エナメル質の内側には、歯の主要部分をなす象牙質があります。象牙質は個人差こそあるものの、一般的に黄色がかった色をしています。そして、象牙質は加齢とともに黄色みを増すことが分かっています。
そのため、お年寄りの歯は黄色っぽい色をして見えるという訳なのです。また、何らかの原因でエナメル質の層が薄くなり、象牙質の黄色みが透けて見えることで、歯が黄色っぽく見えてしまうこともあります。
あと、遺伝的な疾患や無カタラーゼ症などが原因でエナメル質の形成不全を起こし、それによってそもそも象牙質の目立つ、黄色っぽい歯が生えてくるようなケースもあります。
タバコやコーヒーによる着色
歯が黄ばんでしまう原因としては、喫煙習慣や食習慣もあげられています。タバコを吸う人の歯が黄色くなることは、なんとなくイメージしやすいのではないでしょうか。
タバコにはニコチンとタールが含まれていますが、そのうちのタール(いわゆるヤニと呼ばれる物質)が歯の表面に付着し、歯を黄色く見せてしまうのです。
タバコをよく吸う人の家に行くと、なんとなく家具や窓ガラスが黄色っぽくなっていることがあります。そのような家具に洗剤をかけて布で拭くと、布が黄色くなります。
タールが家具や窓に付着しているからそうなるのですが、タバコを吸う場合には直接、歯にタバコの煙を浴びせかけるようなものですから、簡単に歯の表面が黄色くなってしまうという訳なのです。
タバコ以外にも、食習慣によって歯の表面が黄色くなるケースもあります。たとえば、コーヒーや赤ワイン、緑茶などの飲み物を飲むと、歯の表面が黄色っぽくなりやすいとされています。
これは、コーヒーに含まれているカフェインや、赤サインに含まれているポリフェノール、緑茶に含まれているタンニンといった成分に、歯を着色する働きがあることに由来しています。
その他、ターメリックなどの香辛料を用いた料理(代表的なものはカレー)、着色料を用いた料理などを食べることによって、歯の表面が黄色っぽくなるリスクが増すということです。
タバコのヤニや、食品によって歯の表面が黄色くなる場合、付着した物質のことをステインと呼んでいます。そして、ステインは通常の歯磨きではなかなかとれないという厄介な性質があります。
ホワイトニング歯磨き粉によるホワイトニング効果は?
歯の黄ばみについてお分かりいただけたところで今回はホワイトニング効果がある歯磨き粉を使って歯が白くなるのか?という点についてご説明していきたいと思います。
歯自体は白くならない
結論から言うとホワイトニング用の歯磨き粉では「歯自体は白くならない」ということです。あくまでも歯磨きによって歯の表面に付着した汚れをとるのが目的だということです。
つまり黄ばみの原因を2つ紹介しましたが歯磨き粉で白くなるのはタバコやコーヒーなどで表面についた着色による黄ばみだけです。
そのため、ある程度まで黄色くなってしまった場合や、歯そのものが黄ばんでしまったような場合は、まず歯科医院でホワイトニングをおこない、その効果を持続させるためにホワイトニング用の歯磨き粉で歯を磨くという発想にするとよいでしょう。
歯磨き粉によるホワイトニング効果2つ
歯磨き粉でホワイトニング効果を出す商品にも大きくわけて2つ方法があります。それぞれ白くする方法が違っていますのでよく成分を見極めて購入することをおすすめします。
①ポリリン酸などで着色汚れを分解する
セルフホワイトニングとは聞いたことがあるでしょうか?セルフホワイトニングとはエステサロンなどで自分で歯に薬剤を塗って歯を白くするホワイトニングです。
歯科医院ではないので歯自体を白くする薬剤が使用できないのでポリリン酸やメタリン酸、酸化チタンなど汚れを分解する成分を使用します。そうすることで歯の表面についた着色による汚れを落とし歯をキレイにすることができます。
その成分を歯磨き粉に配合することによって歯の表面についた着色汚れを分解してくれます。
②研磨剤で物理的に着色汚れを落とす
歯磨き粉に研磨剤を配合することで汚れをしっかり落とすことができます。タバコやコーヒーでつく着色汚れも研磨剤によってきれいにすることができます。
研磨剤は主に無水ケイ酸、重質炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどです。
ホワイトニング歯磨き粉を使うコツ
ホワイトニング用の歯磨き粉によって、歯そのものを白くする方法も実はあります。ただ、注意点があるのであわせて紹介したいと思います。
海外の商品だと過酸化水素が含まれた歯磨き粉もある
インターネットが普及した昨今、日本では正式に認められていない医薬品を、海外から個人輸入することが可能となっています。
アメリカでは歯のホワイトニングをするのは身だしなみの1つと考えられており、ホワイトニング用の歯磨き粉にも、過酸化水素を含んだものがあります。
過酸化水素は分解される過程で歯そのものを白くしてくれるので、そのような歯磨き粉を使用した場合、歯自体のホワイトニングが可能となります。
ただし、日本では医師や歯科衛生士の指導のもとでおこなうべきものであることから、副作用などが現れた際にすべて自己責任となるため、注意が必要となっています。
日本人の場合アメリカ人に比べてエナメル質が薄いので刺激の強いこのような歯磨き粉を使って知覚過敏などの症状が出る確率が高いということも理解しておきましょう。
フッ素やハイドロキシアパタイトを使用した歯磨き粉を一緒に使う
歯を磨きすぎることによって歯の表面が摩耗することを防ぎたい場合には、フッ素やハイドロキシアパタイトを含む歯磨き粉を併用するとよいでしょう。
フッ素やハイドロキシアパタイトには、歯の表面を守ってくれたり、歯の表面にできた小さな傷を修復したりする働きがあります。特に、知覚過敏気味の方におススメです。
強い力で磨かない
ホワイトニング用の歯磨き粉を用いる際に限った話ではありませんが、歯磨きは歯の汚れを落として、歯茎の血行をよくするためにおこなうものです。歯自体をゴシゴシと強い力で磨くのは避けましょう。
着色を落とすホワイトニング
先ほど歯磨き粉は歯自体を白くするホワイトニング効果はなく歯に付着した着色汚れを落とす効果があるとご紹介しました。
それと同じように歯の着色汚れを落とす方法は他にもございます。一般的にホワイトニングと言われているものも厳密に言うとホワイトニングではなくクリーニングと言った方が正しい場合があります。
セルフホワイトニング
セルフホワイトニングは、自宅でおこなうホワイトニングのことをいうのではなく、専門の機器やホワイトニング剤を備えたサロンに行って、自分でホワイトニングをおこなうことを意味しています。
というのも、職業として人の口腔内を見ることは、国家資格を持つ医師や歯科衛生士しかおこなってはならないからです。家族の歯磨きをしてあげるのは構いませんが、他人の歯を磨いてそれでお金をとってはいけないのです。
セルフホワイトニングで用いられるホワイトニング剤としては、ポリリン酸が代表的なものとしてあげられます。ポリリン酸は化粧品に分類されるもので、歯の表面の汚れを落とす効果があります。
ただ、セルフホワイトニングのサロンなどでは、ポリリン酸を歯に塗布したあとに特殊なライトを照射するケースがあるのですが、これには何の意味もないということです。
歯科医院でおこなわれるホワイトニングの場合、ホワイトニング剤に含まれる過酸化水素の働きがライトを照射することで活性化するという効果が得られるのですが、ポリリン酸の場合はそのようなことがありません。
あくまでも、セルフホワイトニングは歯の表面の汚れをとるための施術であり、歯そのものを白くするものではないということを忘れないようにしましょう。
歯の消しゴム
鉛筆やシャープペンシルで書いた後を消しゴムで消すように、歯の表面に付着した汚れを、歯の消しゴムで落とすという方法もあります。
ボールペンのような形状をしているのですが、先からシリコンでできた消しゴムが付いており、それで歯の表面を磨くことによって、歯の表面の汚れをとることが可能となっています。
無水ケイ素(シリカ)などの研磨剤が含まれており研磨剤の力で汚れを落とすものです。
また、激落ちくんのようなメラミンスポンジで汚れを落とすタイプもあります。
歯自体を白くするにはプロによるホワイトニング
ここまでは歯に付着した着色汚れを落とす方法をご紹介してきました。最初に調べたきっかけも歯磨き粉で歯が白くなるのか?という疑問でしたね。
ここからは歯磨き粉では白くならない歯そのものを白くするホワイトニングの方法について詳しくご紹介していきます。
オフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングは、デンタルオフィス=歯科医院でおこなわれるホワイトニングのことを意味しています。歯科医師、もしくは歯科医師の指導のもと歯科衛生士によっておこなわれるホワイトニングのことを言います。
オフィスホワイトニングをおこなう際には、過酸化水素の含まれたホワイトニング剤を用いるのが一般的です。日本の医薬品医療機器等法(旧薬事法、現在のいわゆる「薬機法」)によると、過酸化水素は、医師もしくは医師の指導のもと歯科衛生士によって正しく使用される必要があります。
このように書くとやや大仰に聞こえるかもしれませんが、過酸化水素自体はそれほど珍しいものではありません。たとえば、怪我をしたときに用いられるオキシドールは、過酸化水素の3%水溶液のことです。
その場合は医師の指導がなくても用いることが可能なのですが、ホワイトニングをおこなう際に用いる過酸化水素は高濃度となっているため、専門家による取扱いが絶対条件となっているのです。
オフィスホワイトニングのメリットは、1回の施術でも明白なホワイトニング効果が得られるという点です。また、歯のプロフェッショナルが施術をおこなうため、もっとも安全なホワイトニング法であるとも言えます
オフィスホワイトニングのデメリットとしては、1回の施術で効果は出るものの、ホワイトニング効果の持続する期間が短い、ということがあげられます。また、費用もやや高額となります。
ホームホワイトニング
ホームホワイトニングは読んで字のごとく、家でおこなうタイプのホワイトニングを意味します。とは言うものの、自己流で勝手におこなう訳ではなく、基本的には医師の指導のもとでおこなうこととなります。
ホームホワイトニングをおこなう際には、まずその人に合った形のマウスピースを作ることとなります。なぜなら、歯の形や歯並び等は人それぞれだからです。しっかりとしたマウスピースを作っておかないと、ホワイトニング剤が漏れてしまうことにもつながりかねません。
マウスピースができたら、ホワイトニング剤をマウスピースに塗布して、それを1時間から2時間程度、歯に装着します。そして、徐々にホワイトニング剤の有効成分を歯に浸透させていくのです。
ホームホワイトニングをおこなう際のホワイトニング剤には、過酸化尿素が含まれているのが一般的ですが、過酸化尿素を使用する際にも過酸化水素が発生するため、オフィスホワイトニングと同様の効果が得られることとなります。
ホームホワイトニングのメリットは、オフィスホワイトニングと比較した場合、費用が抑えられるという点にあります。マウスピースを作ってしまえば、あとは追加のホワイトニング剤を購入するだけで済むからです。
また、家にいてできるので気軽だという点もメリットとしてあげられます。デメリットとしては、即効性がないということがあげられます。これは、ホームホワイトニングに用いるホワイトニング剤が、オフィスホワイトニングで用いるものよりも弱いことが理由となっています。
ただ、ホームホワイトニングを継続することでホワイトニングの効果が表れた場合、その効果は長持ちするというメリットもあります。
デュアルホワイトニング
デュアルホワイトニングは、簡単に言うとオフィスホワイトニングとホームホワイトニングを並行しておこなうホワイトニング法です。
オフィスホワイトニングの効果が長持ちしないという点を、ホームホワイトニングのメリットで補い、ホームホワイトニングの即効性に欠けるデメリットを、オフィスホワイトニングのメリットで補うという、相互補完効果のあるホワイトニング法と言えます。
現在のところ、最強のホワイトニング法がこのデュアルホワイトニングと言えそうですが、デメリットとしては、費用が高額になるということがあげられます。
どうせホワイトニングをするのであれば、初期費用をガッツリと投下して、その分だけ高いホワイトニング効果を得て、あとは自分でケアしていく、といった方にはおススメの方法と言えます。
ホワイトニング用の歯磨き粉を上手に使い分けましょう!
今回は、市販の歯磨き粉でホワイトニングが可能かどうかを中心にお届けしてきました。結論から言うと、ホワイトニング用の歯磨き粉には、歯の汚れを落とす効果はあるものの、ホワイトニング効果はあまり期待できません。
だからと言って、ホワイトニング用の歯磨き粉で歯を磨くのが無意味という訳ではありません。歯科医院でおこなったホワイトニングの効果を長持ちさせたり、口内環境を改善したりすることが可能となっています。歯のホワイトニングは総合的に考えることが大事だということですね。