「人の振り見てわが振り直せ」などという言葉がありますが、人の口臭が気になったときに、「もしかして自分も?」と感じる方もいらっしゃるかも知れません。口臭の原因は実にさまざまですし、また自分の臭いというものは気が付きにくいものでもあります。そこで今回は、口臭の原因とその対処法について、徹底解説していきたいと思います。
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口臭を根本から消すために!口臭が人に与える悪影響を知る
口臭の原因や対処法について解説する前に、まずは口臭が人に対してどのような影響を与えるのか、また、どのような性質をもっているのかについて簡単に紹介しておきたいと思います。
自他ともに気になるにおい第一位の口臭
口臭はその他の体臭と比べてもっとも他人に伝わりやすいという性質があるため、自他ともに気になる臭いナンバー1にあげられることもしばしばあります。
身体の他の部分の臭いはよほど近づかなければ分からないことが多いですが、口臭の場合は会話をするだけで相手に気付かれてしまうことがあるからです。
気になりだすと過剰に気になるのが口臭
口臭には気になりだすと、そればかりが気になってしまうという性質もあります。中にはたいして口臭がしていないのに「自分の息は臭い」と思いこんでしまうような人もいます。
気になっても指摘してもらえない口臭
口臭のやっかいなところとしては、なかなか他人に指摘してもらえるようなものではないということもあげられます。例えば、髪の毛がちょっと跳ねていれば「髪の毛が乱れているよ」と指摘してもらえますが、口臭の場合はそうもいきません。
口臭を感じたときに「息が臭いですよ」なんて言いにくいですよね。下手をしたら相手を怒らせることにもつながりかねません。
口臭が原因で人間関係にヒビが
先に述べたように、口臭は非常にデリケートな問題です。親しい間柄であったとしても、口臭を指摘することによって人間関係にヒビが入るようなこともあります。
また、親しい間柄ではない人であっても、口臭が気になって顔をそむけていたりすると、自分に非がないのに悪い印象を相手に抱かせることにもつながります。
口臭を消すためには原因を知る
それでは次に、口臭が起こってしまう原因について解説していきたいと思います。口臭には以下のように、実にさまざまな原因があるのです。
口の中の細菌
口臭の原因としてもっとも一般的なのが、口の中に存在している細菌です。では、どのような最近によって口臭が発生してしまうのでしょうか。
揮発性有機化合物(VSC)
口臭が発生する原因として、口の中に存在している細菌が食べカスを分解する時に出す揮発性硫黄化合物(VSC)の存在があげられます。
揮発性化合物には硫化水素やジメチルサルファイド、そしてメチルメルカプタンの3種類がありますが、口臭にもっとも関係しているのがメチルメルカプタンであるとされています。
メチルメルカプタンはチオールの一種で、メタンチオールと呼ばれることもあります。メチルメルカプタンは悪臭防止法や大気汚染防止法といった法律でも、規制物質に指定されているほど不快な臭いがする物質とされています。
実際に、歯周病によって口臭を発している人の臭気を測定してみると、メチルメルカプタンの数値が非常に高くなっていることが分かるということです。
ポルフィロモナスジンジバリス(pg菌)
口の中にはもともと多数の細菌が存在していますが、口内の細菌バランスが乱れることによって、虫歯や歯周病になりやすくなると考えられています。
口内にも腸内と同じように、善玉菌と悪玉菌が存在しています。ビフィズス菌などは善玉菌の大乗ですが、悪玉菌の代表としてあげられるのがポルフィロモナスジンジバリスと呼ばれる細菌です。
ポルフィロモナスジンジバリスは嫌気性(空気に触れることを嫌う性質のこと)の細菌で、歯周病の発症と密接なかかわりがあることから、「歯周病原因菌」として、口内のその他の細菌と区別されています。
歯周病原因菌としては、ポルフィロモナスジンジバリスの他にもアクチノバシラスアクチノマイセテムコミタンスやプレボテラインターメディア、カンピロバクターレクタスなどがあげられています。
中でもポルフィロモナスジンジバリスは重度の歯周病との関係が特に深いことから、レッドコンプレックスと呼ばれています。
歯周病が進行すると、歯茎がはれて出血するだけでなく、膿が出て強烈な臭いを発することとなりますが、そのようなときに、ポルフィロモナスジンジバリスの関与が疑われるという訳なのです。
唾液の減少
口臭の中には大きく分けて病的口臭と生理的口臭、外因的口臭の3種類がありますが、その内、生理的口臭と呼ばれるもののほとんどが、唾液の減少によって起こるとされています。
例えば、朝起きたときに口臭がきつくなっているのは誰にでも起こりうることです。ただし、起床時の口臭は時間の経過とともに徐々に和らいでいきます。
その他にも、緊張した時や空腹のときに唾液が減少して、一時的に口臭の強くなることがあります。そのような生理的口臭は、唾液の減少によってもたらされるということです。
内臓の病気
可能性としては低いですが口臭の中でも「病的口臭」と呼ばれるものは、内臓疾患から来ている可能性があります。循環器系や呼吸器系の疾患を持っている場合、特有の口臭を発することが分かっています。
食べ物
口臭の内、外因的口臭と呼ばれるタイプの口臭は、食べ物によってももたらされるということです。ニンニクを食べた後に一時的に息が臭くなりますが、それが外因的口臭の最たるものです。
タバコ
タバコも外因的口臭を引き起こす原因となっています。タバコを吸う人は気が付かなくても、周りにいる非喫煙者には分かってしまうものです。
口臭セルフチェック
口臭はあまり人に指摘してもらえるものではないので、なかなか気が付きにくいものです。そこで、自分に口臭があるのかどうか、セルフチェックしてみましょう。
チェックリスト
①舌の掃除をしたことがなく舌が白っぽくなっている
歯磨きは毎日するけど、舌の掃除をしたことがないという場合、口臭を発している可能性があります。舌に付着している舌苔(ぜったい)の量が増えて白っぽくなっている場合、口臭を発するリスクが高くなります。
②歯ブラシで舌の掃除をしている
歯磨きのときに舌の掃除をしているという人でも、歯ブラシで磨いているような場合、かえって口臭を誘発することがあります。なぜなら、舌は非常に繊細な器官であるため、歯ブラシで磨くことでかえって傷ついてしまうからです。
③歯を磨くと血がでる
歯磨きの際に歯茎から出血するような場合、歯周病になっている可能性があります。歯周病が進行すると、口から悪臭を放つことになりかねないため、注意が必要です。
④歯茎が赤くなっている
歯周病の厄介なところは、初期段階では痛みを感じることがないため、歯周病になっていることに気が付きにくいという点です。ただ、歯茎から出血したり、歯茎が赤くはれていたりすることで、歯周病に気が付く場合もあります。
⑤歯がグラグラしているところがある
歯周病が進行すると、歯茎が退行して歯が伸びたように見えることがあります。そのような歯は、根元が安定せずにグラグラとしてしまいます。これは、歯周病が進行しているサインでもあります。
⑥ストレスを感じることが多い
口臭の原因としてはストレスの存在もあげられています。ストレス状態が続くと自律神経のバランスが乱れ、唾液の分泌にも異常をきたすからです。
⑦口の中がパサパサすることがある
ふと気が付くと口の中が乾燥しているというような人も、口臭の起こるリスクが高くなります。普段から水分の摂取量が少ないような人は要注意です。
⑧お酒を沢山飲む
お酒をたくさん飲む人も口臭を発するリスクが高くなります。お酒自体が臭うということもありますが、お酒に含まれている臭い成分が血液中に溶けだし、それがめぐりめぐって肺から吐き出されることによって、「酒臭い」と言われる訳です。
⑨胃の調子が悪い
胃がもたれやすい人や、胃の機能の低下している人にも口臭の見られるケースが多々あります。胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を患っているような場合、特有の臭気が見られるということです。
⑩便秘症
便秘になると腸内に長期間、便が留まることになります。体内に長くとどまっている便はやがて腐敗し始め、メタンガスを発生させます。メタンガスはやがて血液中に溶けだし、その臭いが肺からはきだされることによって、口臭につながりという訳です。
⑪にんにくやニラなどにおいのキツイ食事をした
食事のときににんにくやニラ、ネギやラッキョウ、納豆などにおいのキツイ物を食べた後に、一時的に口臭がひどくなるケースがあります。
⑫タバコを吸う
タバコを吸う習慣のある人も、口臭を発しやすくなります。マウスウォッシュなどで口をゆすいでも、非喫煙者にはタバコの不快な臭いが分かるものです。
チェックリストを確認してみましょう
いかがでしたか?気になるチェックポイントはありましたでしょうか。それでは該当した数字について簡単に解説していきたいと思います。自分が口臭があるか、何が原因なのかがわかってくると思いますよ。
①~⑤は口の中の細菌が影響している可能性が高い
①、②に該当した人の場合、メチルメルカプタンが発生している可能性があります。まだそれほど臭気が強い状態ではないので、早めにケアしましょう。
③~⑤に該当する人は、ポルフィロモナスジンジバリスが原因となって、口臭を発している可能性があります。そのような場合、早めに歯科医院を受診しましょう。
⑥⑦は唾液の減少している可能性が高い
⑥、⑦に該当した人は、唾液が減少したことで生理的口臭を発している可能性があります。普段から水分補給をしっかり行うことで、そのような口臭を解消することが可能です。
⑧~⑩は内臓の病気が原因の可能性が高い
⑧~⑩に該当する場合、内臓疾患が潜んでいる可能性もあります。まずは内科を受診して、身体に異常がないかを調べてもらいましょう。
⑪⑫はそれぞれが原因
⑪、⑫に該当する人は、外因的口臭を発している可能性があります。臭いのキツイ食事をした後には、緑茶や牛乳を飲むとよいでしょう。また、可能であればタバコは卒業しましょう。
口臭を根本から消すには?
口臭にはさまざま原因がありますが、根本から改善するためにはどのような対策を講じればよいのでしょうか。
正しい舌のお掃除
口臭の原因として舌苔の存在があげられていましたが、舌はとても繊細な器官なので、掃除をする際には専用のクリーナーを使用するよう心がけましょう。
歯周病の改善
歯周病が原因となって口臭を発しているような場合には、歯科医院に通ってまずは治療をおこなうことが必要です。また、歯周病が改善してからも定期的にクリーニングをしてもらい、ポルフィロモナスジンジバリス(pg菌)が増殖しないようにしましょう。
唾液腺マッサージ
口臭の中には生理的口臭と呼ばれるものがありますが、その原因のほとんどが唾液量の減少です。唾液の分泌量を増やすためには、唾液腺のマッサージをおこないましょう。
唾液腺には耳下腺と顎下腺、そして舌下腺の3つがあります。中でも耳下腺は最大の唾液腺なので、耳の下あたりを人差し指から小指でクルクルとマッサージすると効果的です。
ガムを噛んで唾液を出す
唾液の分泌量を増やして生理的口臭を改善する方法としては、ガムを噛むという手もあります。ミント系のガムにすれば、さらに口臭予防効果が高くなりますよ。
内臓の病気はお医者さんへ
口内環境を改善しても口臭がなくならない場合、内科系の疾患の可能性もあります。そのような場合には、内科を受診して検査してもらいましょう。
食べ物のにおいには緑茶
市販されているガムの中には、「緑茶入り」とされるものがあります。それは、緑茶に口臭を抑える効果があるからです。臭いのキツイ食事をした後には緑茶を飲むとよいでしょう。ただし、根本的に口臭を改善する方法とはなりません。
口臭がメンタルからきている場合
実際には口臭がそれほど強くないのに、自分の口臭がひどいと思ってしまっているケースがあります。そのような人は、口臭のことばかり気になってしまい、周りから臭いと思われているなど被害妄想に陥ってしまうこともあります。
口臭があるかどうかは歯科医院などで測定してもらえます。実際に口臭のないことが数値として現れれば、安心できると思います。口臭が気になる場合、1人で悩んでいないで、歯科医院を受診してくださいね。
口臭を消すには原因を知ろう
口臭の原因や対処法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。一口に口臭と言っても、いろんなタイプのあることが分かって頂けたことと思います。もし口臭が気になる場合は歯科医院や内科を受診して、まずは原因を特定することから始めてくださいね。