脂漏性皮膚炎の原因・症状と治し方!保湿しないと危険?

頭皮にニキビみたいなものができてベタベタしている、かゆい、フケがたくさん髪にまとわりついてくる、なんてことはありませんか?症状は軽いからといって甘く見てはいけません。もしかしたらそれは脂漏性皮膚炎かもしれません。脂漏性皮膚炎かもしれないと感じた時に打てる対策があります。

笠井美貴子
この記事の監修者
シロノクリニック銀座院 副院長
《経歴》
2009年 東京女子医科大学医学部卒業
同年 大森赤十字病院(内科、外科、皮膚科)研修
2011年 東京女子医科大学病院皮膚科勤務
2012年 三井記念病院皮膚科勤務
2014年 都内美容クリニックにて勤務
2015年 シロノクリニック入職
所属学会:日本皮膚科学会

《メッセージ》
美容医療は治療を重ねていくことで、効果をよりご実感いただけるものが多くあります。たった一度のメンテナンスではなく、長く通っていただけるよう、患者さまのライフスタイルに合わせた治療をご案内しています。小さいなシミやしわなどのお悩みから、気にしている長年消えない傷やアザまで、まずはお気軽にご相談にいらしていください。みなさまのキレイをお手伝いをさせていただければ幸いです。
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脂漏性皮膚炎とは

脂漏性皮膚炎とは

赤みがある頭皮

皮脂には本来、皮膚や髪の毛を保護し、うるおす働きがあります。ところが後に述べるように、さまざまな原因によって皮脂の分泌量が多くなると、吹き出物(ニキビ)が出たり、皮脂が酸化して油の腐敗したような臭い(加齢臭)を発したりすることがあります。
さらに、そこに炎症が起こって地肌が赤くなったり、湿った感じのする、古くなってはがれ落ちた皮脂の塊が地肌にこびりついたり、かゆみの症状があらわれたものを、脂漏性皮膚炎といいます。たとえば髪の毛に隠れているためわかりづらい頭皮は、皮脂が多いと言われている顔のTゾーンよりも皮脂分泌が活発な部位です。

頭皮に起こる初期症状は、皮膚が荒れてかさつき、細かく剥がれ落ちるため、フケがたくさん出るようになることです。また、眉毛や、鼻のまわり、こめかみや耳の裏側など皮脂の分泌が多い部位にも、赤らみや、古くなってはがれ落ちた皮がこびりついたりすることがあります。ただ、初期症状を一見しただけでは、アレルギー性皮膚炎や刺激性皮膚炎と見分けがつかいため、もし皮膚に炎症による赤らみやかゆみ、皮膚のかさつきに気づいて脂漏性皮膚炎かな、と感じたら、できるだけ早期に医療機関を受診することをおすすめします。

脂漏性皮膚炎の症状

虫眼鏡でフケが見える頭

特に30歳から40歳代になって、頭皮にフケが多くなったり、頭皮にこびりついたりする症状があれば、今後、脂漏性皮膚炎になる可能性があるため要注意です。軽症であれば、単なる乾燥肌やフケが出ているだけと思って症状を放置しがちですが、頭皮は特に汚れや皮脂が留まりやすい部位であるため、必要な対策をとらないでいると、症状はどんどんひどくなります。たとえば、頭皮や髪がべたつく半面、カサカサと湿ったようなフケが出たり、湿疹が出て激しく頭皮がかゆくなったりする症状が、頭全体に広がります。

頭をかいている女性

また、かゆさのあまり、かいてしまった部位にかさぶたができたり、重度の炎症を起こしたりして脱毛する場合もあります。このように、ひとたび脂漏性皮膚炎になると、治りづらく、悪化しやすいという問題があります。脂漏性皮膚炎の疑いは、生後3か月くらいまでの新生児や、30~40歳代の成人に多く、新生児では多くが自然治癒しますが、成人では慢性化するケースが多いようです。

脂漏性皮膚炎の種類

古くなった黄色い皮膚の塊がこびりつき、炎症を起こして赤い斑があらわれる症状は、特に汚れや皮脂が留まりやすい頭皮だけでなく、首 周り、前胸部、上背部、腋の下、足の付け根など皮脂の分泌や他との摩擦が多い部位にもあらわれます。顔であれば、鼻の周辺や毛髪の生え際、耳の後ろ、などの部位に、よく症状があらわれます。

脂漏性皮膚炎の原因

刺激による皮脂の分泌が多くなる

ふけがついている頭

脂漏性湿疹は、古くなってはがれ落ちた皮脂や、皮膚にこびりついた汚れが、刺激となって起こるといわれています。それゆえ、皮膚へ刺激を与えることは、なんであれ皮脂の分泌をうながすことになります。たとえば、日時用生活の中で、頭や身体に対して、つめを立ててかいたり、こすったりすることはやるべきではありません。できる限り刺激を与えないようにすることが大切です。
また、ヘアトニックなどの整髪料は長時間、頭皮に接触する可能性があるため、できれば避けた方が無難です。言うまでもないことですが、ヘアワックスやジェル、メイクなどを落とさずに眠るのは、それだけで皮膚への刺激になるので絶対にNGです。寝る前にはそれらを洗い落とすことを忘れず、頭皮を清潔に保つことが重要です。保湿用のコットンパックや化粧水自体も刺激物となることがあるため、やはり注意が必要です。乾燥したコットン自体が刺激となることや、肌内部の水分まで奪ってしまうことがその理由です。化粧水のつけ過ぎも避けるべきです。皮膚から化粧水が蒸発する際、肌の水分も一緒に奪い取って、皮膚をより乾燥させてしまうことがあるからです。

洗い過ぎと頭皮のバランスが崩れる

頭を洗っている女性

肌には皮膚の水分を維持し、皮膚を保護する役割をもつ皮脂バリアと呼ばれる機能が備わっています。それゆえ、皮膚は常に清潔に保つとともに、皮脂も皮膚バリアが機能するのに十分な皮脂が分泌されていなければなりません。頭皮や身体を丁寧に洗うことは大切ですが、洗いすぎはかえって必要な皮脂まで洗い落としてしまうため、注意が必要です。皮膚が乾燥すると、かえって皮膚の分泌がうながされてしまうからです。
洗う頻度はかならずしも毎日である必要はありません。かゆみやフケが出ない、といった状態を目指すことがベターです。また逆に、きちんと洗えているつもりでも、生え際やフェイスライン、後頭部、耳のうしろなどは洗い残しが残りやすい部位です。それが刺激となって皮膚にダメージを与えたり、皮脂汚れをためたりする原因となるため、こちらも注意が必要です。

保湿し過ぎるのも逆効果になる

シャンプーや洗顔などで過剰な皮脂を取った後は、きちんと保湿すればよいと考えることも注意が必要です。脂漏性皮膚炎の場合、脂を除去した後、皮脂分泌を正常に戻そうとして、むやみに保湿をし過ぎるとかえってバリア機能を低下させてしまうことがあるため、おすすめしません。
たとえば、皮膚にかゆみや赤みがある方や、脂漏性皮膚炎となった患者の方が、化粧水のためにかえって肌がかゆくなったり、乳液で毛穴がつまり広範囲に皮脂詰まりができたりすることがあります。これは、症状に対して、肌に合わない保湿成分や毛穴に詰まりやすい成分が含まれていたことや、保湿クリームなどの使用量が多かったなどに原因があるからにほかなりません。
それゆえ、脂漏性皮膚炎かなと感じた症状をお持ちの方は、保湿について自身での判断はなるべく避け、医師や医療機関などで適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

乱れた食生活が原因

巨大なハンバーガー

ファーストフードやコンビニ弁当など、炭水化物や脂肪の多い食事を摂り続けていると、皮脂の分泌量も増加します。また、ロースやカルビ・モモ肉は、特に油分が多く含まれているため食べ過ぎには注意が必要です。甘いものについても、体内で糖から脂質へと代謝され、最終的に余分な皮脂として分泌されるため注意が必要です。

野菜に含まれるビタミンB2やビタミンB6、ビタミンCは、皮脂の分泌量を調節する作用があります。しかし野菜が不足すると、それらのビタミンが不足するため、皮脂量の増加につながります。また、コーヒー、アルコール、香辛料などの嗜好品も、皮脂の分泌を増やして皮膚に悪影響を及ぼすことがあるため、脂漏性皮膚炎が疑われた際は、できるかぎり控えめにすることをおすすめします。

睡眠不足・ストレス

デスク

生活習慣の乱れやストレスも、皮脂分泌に悪影響を与え、脂漏性皮膚炎の原因となることがあります。生活習慣の乱れが顕著に現れるのが睡眠です。睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、自律神経のバランスが整わなくなり、皮脂の分泌量を増やす男性ホルモンである、テストステロンやアンドロゲンの分泌が高まります。また、睡眠同様、身体がストレスを感じることでも、これらのホルモンの分泌量が増大するため、皮膚の健康のためにはうまくストレス解消することが大切です。

遺伝

脂漏性皮膚炎は、乳児の場合には、自然に治ってゆくケースがほとんどですが、成人では、なかなか治らず慢性化する場合が多いのが実情です。その原因のひとつとして、遺伝的に皮脂分泌の多い体質であることも強く関係しています。この場合、完治は難しいうえに、再発もしやすいですが、医師の指導の下、症状をそれ以上悪化させないことに力点を置いた治療を、長期にわたって続けることが大切です。

脂漏性皮膚炎を改善する方法

洗浄力が強すぎないシャンプー・ボディソープを使おう

シャワーを浴びている女性

脂漏性皮膚炎は、元をたどれば皮脂の過剰な分泌が原因です。それゆえ皮脂の分泌をできるだけ抑えることで改善が期待できます。まずは毎日の頭皮ケアから見直してみましょう。洗浄力が高すぎるシャンプーは、皮膚の乾燥を防ぐ皮脂バリアに必要な皮脂まで洗い流して、頭皮をさらに乾燥させてしまうためNGです。
この場合、頭皮への刺激をできるだけ少なくする低刺激のシャンプーや洗顔料を選ぶことが重要です。脂漏性皮膚炎で敏感となった皮膚に刺激を与える成分である、フェキシエタノールや石油系の合成界面活性剤、パラベンなどの保存料が入ったものは避けるようにしましょう。
なお、パラベンフリーと書かれたものも確かにありますが、たとえパラベンが無添加であっても、フェキシエタノールといった別の保存料が入っているものも数多くあります。パラベンよりも肌への刺激が強いので、パラベンだけに気をとられないよう注意が必要です。

正しいシャンプーの仕方を知ろう

いいねをしている女性

皮脂分泌が活発な頭皮を洗う際は、皮脂をきちんと落とすためにもかならず1~2日に1度は、皮脂分泌の多い地肌部分を清潔に保つため、上記でご紹介した、低刺激性のシャンプーで頭を洗いましょう。
また、すでに何度もお伝えしたことですが、皮脂分泌の多い頭部などの地肌を洗いすぎると、かえって皮膚が乾燥するため、その反動で皮脂分泌が増加してしまうことがあります。なので、皮脂腺の多い地肌部分を洗う際はゴシゴシとこするのではなく、指の腹でやさしく洗うようにしてください。
なお、脂漏性皮膚炎用のシャンプーとして備えていてほしい3つの条件があります。

  • 条件①シャンプーの主剤としてアミノ酸が使われていること。
  • 条件②頭皮の乾燥を防いでくれる保湿成分が配合されていること。
  • 条件③抗炎症成分が入っていること。

条件①は、アミノ酸が主剤として配合されていることで、特にマイルドな洗浄力をもったシャンプーとして、皮膚を優しく洗えることができるからです。
条件②について、皮膚の乾燥を防ぐのに、特に効果的な成分としてヒアルロン酸やセラミド、ローズエキスやホホバ油などがあります。
そして最後に、条件③についてですが、抗炎症成分がかゆみを抑えることで、かきむしりやフケを抑えることができるだけでなく、症状の悪化も抑えることができるからです。配合されていることが望ましい消炎・抗炎症成分として、グリチルリチン酸2kや、カミツレ花エキスやオタネニンジン根エキスなどの植物エキスがあります。
また、最近、脂漏性皮膚炎の原因が、真菌(カビの仲間)によるものである可能性もあることから、抗真菌成分が入ったシャンプーも人気です。医薬部外品として薬局などで簡単に買い求めることができるので、かゆみやフケを抑える手段として取り入れてもよいかと思いますが、いざ脂漏性皮膚炎となった場合は、医師との相談の下、根本的な治療も並行して行うようにしてください。

バランスのいい食生活を維持しよう

野菜サラダ

食生活の偏りも、脂漏性皮膚炎の発症と大きな関係があります。特にビタミンB群の欠乏が症状の悪化を招きます。それゆえ、レバー、シジミ、牛乳、卵、ホウレンソウ、トマト、キャベツ、椎茸などを積極的に摂るようにしてください。また、糖や脂肪が多い食事は避け、肉、魚、野菜をバランスよく食べるようにしましょう。余計な脂肪を体の外へ胚珠する食物繊維を多く含んだ玄米、麦、豆、野菜、芋、海草、キノコ、コンニャク、果物なども毎日の食事に積極的に取り入れることをおすすめします。

規則正しい生活習慣も有効的

嬉しい女性

前述の通り、睡眠不足は、頭皮などの皮脂分泌を増加させる原因になります。それは、心身が強いストレスを受けた時、身体がそれに抗おうとして分泌する、テストステロンやアンドロゲンといった男性ホルモンによって、皮脂量の増加がうながされてしまうからでした。それゆえ、睡眠時間をしっかりと確保し、自律神経やホルモンバランスを整えるとともに、休息の時間を十分に取り、自分が好きなことをする時間を確保するなど、ストレスをためこまないように生活することが重要です。

良くならない場合は早めに皮膚科へ

頭がかゆい、フケのようなものが増えた感じがする、といった症状に気がついたら、それは脂漏性皮膚炎かもしれません。それ以上悪化しないよう、これまでお伝えしたような予防策や改善策を取るとともに、できるだけ早期に、皮膚科を受診して、医師の指導の下、脂漏性皮膚炎の根本治療を行うことが重要です。