歯医者さんに定期的に通っているという人もいれば、歯医者さんは怖いのであまり行きたくないという人もいると思います。
実は私も歯医者さんが怖いのですが、歯医者さんでどのような治療をおこなっているのかが分からないと、余計に恐怖が増しますよね。そのような方のために、今回は歯医者さんでどのような治療をおこなっているのかを詳しく紹介していきたいと思います。
虫歯の治療(神経まで到達してない場合)
歯医者さんでおこなっていることといえば、最初にあげられるのがあたり前といえばあたり前ですが虫歯の治療だと思います。ではまず、神経にまで到達していない虫歯をどのように治療するのかについて見ていきましょう。
麻酔をする
虫歯の治療をおこなう際には、まず麻酔を施されることになります。歯の表面はエナメル質で覆われていますが、その内側に象牙質、そしてさらに内側に歯髄(いわゆる歯の神経)があります。
歯の神経をマヒさせるための麻酔には「浸潤麻酔」や「伝達麻酔」といったものがありますが、歯ぐきに注射する際の痛みを抑えるために、「表面麻酔」といわれる麻酔剤を歯ぐきに塗布するのが一般的です。
麻酔薬を注射器で歯ぐきに注入する際には、麻酔剤を温めるというステップを踏むことがあります。なぜかというと、つめたい麻酔剤をそのまま歯ぐきに注入してしまうと、歯ぐきとの温度差によって痛みを感じるリスクが上昇するからです。
歯の治療自体がおっかないのに、歯ぐきに麻酔をする時点で痛みを感じでいるようでは、さらに恐怖が増すこととなりますよね。そのため、麻酔剤をあらかじめ体温と同程度に温めておくという措置がとられるのです。
通常、歯ぐきに麻酔の注射をするときには「チクッ」とした感じがする程度なのですが、それでも麻酔注射が怖いという場合、電動の麻酔注射器を使用することがあります。それによって、麻酔剤の注入速度をコントロールして、より痛みを感じにくくすることが可能となっているのです。
歯の麻酔をする際には「キシロカイン」や「スキャンドネスト」といった麻酔剤が用いられますが、基本的に副作用の起こるような心配はないということです。
ただ、キシロカインに含まれている有効成分であるエピネフリンには、血管を収縮させる働きがあることから、高血圧の人に対して用いないようにすることが必要です。高血圧の人に対しては、エピネフリンの含まれていないスキャンドネストが用いられることとなります。
とは言うものの、その辺りのことはちゃんとお医者さんが確認して、その人に合った麻酔剤を選択してくれるので、心配はいりません。
虫歯治療をおこなう際の麻酔剤の効果は、だいたい20分から30分続くということです。麻酔剤について何か疑問や心配な点がある際には、お医者さんに相談するとよいでしょう。
虫歯になっている部分を削る
麻酔剤の注射をしたあとには、実際に虫歯の治療をおこなうこととなります。神経まで到達していない初期の虫歯であれば、削る量は最小限で済ませることが可能だということです。
小さい虫歯の場合
それでは次に、虫歯の進行度別の治療法について見ていきたいと思います。まずは、虫歯の部分が小さい場合の治療法について説明します。
プラスチック樹脂を詰める
保険で歯の治療をおこなう際、小さな虫歯の場合は歯を削った場所に被せ物などをせず、プラスチック樹脂を用いて詰め物をおこなうのが一般的です。プラスチック樹脂は歯の色とよく似た色をしている、柔らかい粘土のようなものです。
ライトで固める
虫歯の部分を削った場所には、プラスチック樹脂を詰めることとなるのですが、プラスチック樹脂は先にも述べたように、柔らかい粘土のようなものなので、それだけでは歯を修復したことになりません。
プラスチック樹脂は特殊なライトをあてることによって固くなるという性質があります。ただ、実際にプラスチック樹脂を用いる際には、削ったあとにすぐプラスチック樹脂を詰める訳ではありません。
まずは下準備として、歯を削ったあとのプラスチック樹脂を詰めたい場所薬品で処理し、プラスチック樹脂がくっつきやすい状態にします。そして、プラスチック樹脂をくっつけるためのボンドを塗布し、いったんライトを当てて準備完了となります。
下準備をおこなったら、詰め物をしたい場所にプラスチック樹脂を詰めて、もともとの歯と同じような形状に整えます。その後、ライトを当ててプラスチック樹脂を固めたら修復完了となります。
詰め物というと、かつては金属を詰めるのが主流でしたが、金属の詰め物をする際には歯の型をとらなければならないという手間がありました。プラスチック樹脂の場合にはその必要がないため、金属の詰め物の場合と比べて、治療期間を短くすることが可能となっています。
プラスチック樹脂と聞くと、人によっては「汚れやすいのではないか」とか「すぐに取れてしまうのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、昔と比べるとプラスチック樹脂の材質ははるかに向上しており、また、プラスチック樹脂の種類自体も増えているため、そのようなリスクは減ってきているそうです。
では、なぜプラスチック樹脂は取れやすいとか、汚れやすいというイメージがあるのでしょうか。それは、治療ステップをきっちりと踏んでいないことが原因となっています。
プラスチック樹脂を歯にしっかりと定着させるためには、プラスチック樹脂が歯にくっつきやすい状態をあらかじめ用意しておくことが何よりも重要となっています。
なによりも大事なことは、接着面が濡れていないことです。そのためにしっかりと接着面を乾燥させて、ボンドを塗ることとなるのですが、保険治療の場合は時間の制約があるため、どうしても口中の水分を完全にシャットアウトすることができません。
また、同じプラスチック樹脂であっても、成分の配合によって用途が異なるため、どの部分にどのプラスチック樹脂を用いるのか、慎重な判断が要求されます。
そういったステップが完璧に踏まれていれば、プラスチック樹脂であっても、そうそう変色したり、簡単に取れたりはしないということです。ただ、先にも述べたように、保険治療の場合は時間的制約があるため、プラスチック樹脂の変色や脱離が起こりやすいというのが現状です。
研磨
プラスチック樹脂を詰めた歯は、研磨して形を整えることもあります。
大きな虫歯の場合(奥歯)
奥歯などにできた大きな虫歯の場合、軽度の虫歯のようにプラスチック樹脂の詰め物をするだけでは済まないことがあります。では、神経にまだ達していない大きめの虫歯に対しては、どのような治療が施されるのでしょうか。
型取り
虫歯がエナメル質にとどまらず、象牙質にまで進行しているような場合、虫歯の進行が一気に進んでしまう可能性があります。そのような場合には、できるだけ速やかに虫歯の治療をおこなう必要があります。
象牙質はエナメル質に比べると柔らかいため、表面には小さな穴しか認められないような場合でも、中では進行してしまっているケースがあります。そのような場合、冷たいものだけでなく、熱いものを食べたり飲んだりしても歯がしみてしまいます。
象牙質にまで虫歯が及んでいるものの、神経にまで達していないような場合、まずは虫歯になっている部分をすべて取り除くこととなります。
奥歯にできた大きな虫歯の場合、取り除く部分も多くなってしまうため、プラスチック樹脂の詰め物では間に合いません。そのため、歯全体を覆う被せ物をすることとなります。
虫歯の部分を取り除いた歯には、歯髄(歯の神経)を守るため、まずはセメントや薬剤で穴を埋めます。その後、削った歯の型取りをおこなうことになります。
仮詰め
削った歯の型取りをしたらすぐに治療が終了という訳ではありません。虫歯の治療が終わった歯は、被せ物がしっかりと適合するように、歯質の形を整えます。その上で、被せ物ができるまでの間、仮の詰め物で穴のあいた部分にふたをします。
インレーセット
1週間ほどして被せ物ができあがったら、仮の詰め物を取り除いて、被せ物(インレー)をつけていきます。その際、咬み合わせがしっかりとするように、微調整がおこなわれます。
虫歯の治療(神経に到達している場合)
次に、虫歯が進行して「歯髄(いわゆる歯の神経)」にまで達している場合の治療法について解説していきたいと思います。
麻酔をする&虫歯の部分を削るまで一緒
虫歯が神経まで達している場合も、神経にまで達していない虫歯の治療と同様、麻酔をして虫歯の部分をすべて取り除くこととなります。
神経をとる
虫歯が神経にまで達している場合、神経を取り除くことが重要となります。この治療のことを、「根管治療」と呼んでいます。
根管治療をしっかりとおこなっておかないと、「歯根のう胞」といって、歯の付け根部分に膿がたまってしまうリスクが高くなってしまいます。
根っこの穴を広げる
根管治療をおこなう際には、まず歯髄のなかをキレイに洗浄し消毒することが重要となります。なぜなら、キレイにしておかないと細菌が繁殖してしまうからです。ちなみに、根管治療は慎重におこなう必要があるため、原則として何日か通院して治療をおこなうこととなります。
神経に代わるお薬をいれる
歯髄の洗浄が終わったら、歯髄のなかに神経に変わる薬を入れ、仮の詰め物を用いてふたをします。さらに仮の詰め物をとって洗浄し、歯髄を無菌状態に保つために防腐剤を詰めて密閉します。
土台を立てるための型取り、土台(コア)セット
次に、被せ物のコアと言われる土台がうまく立つように、残った歯を削って整えます。その上で、被せ物の型取りをおこない、いったん仮の詰め物でふたをします。
型取りをして1週間ほど経つと、被せ物の土台が出来上がります。そうしたら、仮の詰め物を取り除いて、セメントを用いて土台を歯にセットします。
差し歯の型取り
被せ物の土台ができたら、土台の形を微調整して被せ物(差し歯)の型取りをおこないます。また、かみ合わさる方の歯も型取りをおこなって、咬み合わせがうまくいくように調整します。
差し歯セット
型取りをおこなったら仮の詰め物でふたをします。1週間ほどしたらクラウンと言われる冠(差し歯)が完成するので、仮の詰め物を取り除いて、セメントを用いて被せ物を歯に固定します。
SRP(スケーリングルートプレーニング)
スケーリングとルートプレーニングは、簡単に言うと「歯石取り」のことを意味します。両者には明確な境界線がないため、スケーリングプレートニング(SRP)と呼ばれることもあります。
麻酔をする
スケーリングプレートニングをおこなう際に、歯周ポケットの深い部分にある歯石を取り除くような場合、歯ぐきに麻酔を施すこととなります。単純に歯石をとるだけの場合は、麻酔が必要ないこともあります。
縁下歯石(歯茎の中にある歯石)の除去
歯石をなぜ取り除く必要があるかというと、歯石は虫歯や歯周病の原因となる細菌のすみかとなるからです。特に、歯茎の中になる歯石は縁下歯石と呼ばれ、歯周病の大きな要因となってしまいます。
縁下歯石は、キュレットと呼ばれる専用の器具を用いて取り除いていきます。通常は30分から60分程度で取り除くことができるということです。
消毒
スケーリングプレートニングをおこなったあとは、消毒をおこなうのが一般的です。歯周ポケットの内側を、生理食塩水やコンクールなどを用いて消毒します。
保険での制約があること
実際に歯の治療をおこなったことのある人であればご存じだと思いますが、虫歯や歯周病の治療をおこなう際、何度も歯科医院に足を運ぶ必要があります。それはなぜなのでしょうか。
何度も通う理由の1つ
歯の治療に何度も通わなければならない理由の1つとして、保険治療における制約があげられます。最大の要因は、1人の患者さんにつき1月に4,500円以上の治療費がかかった場合、厚生局からの個別指導が入るからです。病院側としてはそれを避けたいため、何度かに分けて治療をおこなうのです。
自費を選択することも可能
保険で歯の治療をおこなう場合、保険の制度上、何度かに分けて通うことが必要となります。ただ、忙しくて何度も歯医者さんに通う時間がないという場合は、自由診療で歯の治療を受けるという手もあります。
さらに自費を選択することでより高品質の補綴物を治療に採用することも可能になります。材料としてはセラミックや金などがあります。
歯医者がこんなに安くすむのは日本だけ
日本は国民皆保険制が布かれているため、初診料を除けば歯の治療を数百円程度でおこなうことが可能です。このような安価で歯の治療ができるのは日本だけです。それも、何度も歯科医院に通う理由の1つとなっています。
こまめな受診を!
今回は、歯医者さんでどのような治療をおこなっているのか、代表的な3つに絞って紹介しました。実際にどのような流れで治療がおこなわれるのか、おおよそのところが分かって頂けたのではないでしょうか。
歯医者さんが大好きという人はあまりいないと思いますが、定期的に口内をチェックしてもらって、虫歯にならないようにするのが賢明な選択であるように思われます。