あなたも歯周病かも?知っておけば2年後歯が抜けるのを防げる

口臭の原因として、歯周病があげられることをご存知の方もいらっしゃることと思います。ただ、自分が歯周病になっていることには気が付いていない人がたくさんいることも事実です。

歯周病は30代以降で80%もの人が罹患している、ある意味日本人の生活習慣病となっています。放置すると全身疾患を発症することもあるので、早めに対策を講じましょう!

柴田はるひ
この記事の監修者
歯科衛生士
歯科医師として、30年近く審美治療にかかわってきて、治療後に患者様の笑顔がより輝いてくることに大きな喜びを感じています。 ホワイトニングや矯正治療後に、「これまでコンプレックスだった箇所が自慢の個所に変わった!」「よく笑うようになった!」など「患者さまの人生を変えることに貢献できた!」と思える瞬間が歯科医師としての一番の喜びだと思っています。最近心に残った言葉は「幸せ」には「人から与えられる幸せ」「自分の力で何かを得る幸せ」「他人に与える幸せ」の3種類あり、「他人に与える幸せ」を知っている人が最高の幸せ者である、という言葉です。 私も人生の折り返し地点を過ぎてきましたので、これからは「他人に与える幸せ」を日々実 践していきたいと考えています。 座右の銘は全ての人を尊重する、日々感謝です。 趣味は格闘技観戦、読書です。
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歯が抜けてしまう?歯周病とは

口臭の原因になることでも知られる歯周病は、歯周病菌によって歯茎に炎症を起こしたり、歯茎から出血したりする疾患です。では、歯周病の進行度合いによって、初期、中期、末期の特徴を解説したいと思います。

歯周病軽度(初期)

歯周病は20代でも70%の人が罹っているといわれますが、その割には、歯周病を自覚している人の割合は少ないです。なぜそのようなことが起こるかというと、軽度の歯周病には痛みなどの症状があらわれないからです。

歯周病は歯周病菌によって歯茎がむしばまれ、やがては歯を支えている骨(歯槽骨といいます)までもが浸食され、最終的には歯が抜けてしまう恐ろしい疾患です。

歯周病菌は、歯を磨いたときの磨き残し(歯垢=プラーク)が石灰化した歯石に住んでいますが、初期の段階では歯石を取り除くことで、歯周病をはやく治すことが可能です。

軽度の歯周病に気が付くためには、歯磨きのときにゴシゴシ磨いていないのにもかかわらず出血がみられたり、普段と歯茎の色が違ったりしないかをチェックするとよいでしょう。

軽度の歯周病であれば、治療も簡単で済みますし、歯医者さんに通う回数も少なくてすませられます。歯周病が進行すると、歯周病菌が歯と歯茎の間(歯周ポケット)に入り込んでしまうので、そうならない内に早めに対策するよう心がけましょう。

歯周病の程度は、歯周ポケットと歯槽骨の吸収度合いで計ることも可能です。初期の段階では、歯周ポケットの隙間の深さが3mm程度で、歯槽骨の吸収度合いもそれほど高くありません。ちなみに、歯槽骨の吸収度合いとは、歯周病菌によって奪われてしまった歯槽骨(歯を支える土台となる骨)がどれくらいかを表す数値となっています。

中度の歯周病

歯周病が進行して中度になると、歯周病菌が歯と歯茎の間になる歯周ポケットを侵食しはじめ、歯石が通常なら歯茎に隠れている部分の歯にも付着し始めます。このような歯石のことを「歯肉縁下歯石」と呼んでいます。

歯肉縁下歯石は、通常の歯磨き程度では取ることができないため、歯科医院で除去してもらう必要が出てきます。しかも歯茎の中の付着しているため除去する時に痛みがある場合は麻酔をしてとることになります。この段階まで進んだ歯周病は、中等度の歯周病ということです。

歯周病菌によって歯茎がだんだんと浸食されていくと、歯が伸びたような見た目になる場合や逆に歯茎が腫れているためそう見えないこともあります。

さらに、歯周病菌によって歯槽骨が溶け始めます。とは言うものの、この段階ではまだ歯がぐらつくようなことはありません。

この段階になると、歯周ポケットの深さが6mmほどになることもあります。また、歯槽骨の吸収度合いも30%程度となります。

重度の歯周病

歯周病がさらに進行して重度の歯周病になると、歯の土台となっている歯槽骨をさらに溶かしてしまいます。この段階に至ると歯がぐらぐらしたり、食事のときに痛みが出たりするようになります。

また、歯周病菌によって歯茎自体が腐敗しはじめ、膿がたまるようになります。このときに現れる膿は強烈な臭気を放つため、それが呼気に乗ってひどい臭いのする口臭となってしまう訳です。そして、最終的には歯が抜け落ちてしまうこととなります。

なぜなら、重度になると、歯槽骨の吸収度合いが80%から100%となり、歯を支える土台がなくなっていってしまうからです。また、歯周ポケットの隙間の深さも10mmを超えるようになり、歯が歯茎の中でプカプカと浮いているような状態になります。

この状態ではもちろん硬いものが噛みにくいですし、痛みも伴います、さらに知らない間にポロっと抜けてしまうこともしばしば。

レッドコンプレックス

歯周病を引き起こす細菌にはいろいろなものがありますが、その中でも特にリスクの高い歯周病菌のことを「レッドコンプレックス」と呼んでいます。では、レッドコンプレックスにはどのようなものがあるのでしょうか。

ポルフィロモナスジンジバリス菌(Pg菌)

私たちの口の中には、常時300種類から700種類ほどの細菌が存在しているとされていますが、その中でも特に歯周病と密接な関係のある細菌のことを「歯周病関連性菌」と呼んでいます。

歯周病関連性菌はそれぞれ固有の病原因子を持っているのですが、特に毒性の高い3つの歯周病関連性菌のことを、赤信号というような意味合いでレッドコンプレックスと呼んでいます。

レッドコンプレックスと呼ばれる3つの歯周病関連性菌は、単に歯周病のリスクを高めるだけでなく、血管や全身にダメージを与えることでも知られています。

レッドコンプレックスの1つとして、嫌気性グラム陰性桿菌であるポルフィロモナスジンジバリスがあげられています。ポルフィロモナスジンジバリスは成人性の歯周病を引き起こすリスクファクターとされており、顕微鏡でも判別できないほど小さな桿菌だということです。

ポルフィロモナスジンジバリスの持つ固有の病原因子としては、ジンジパインやコラゲナーゼ、リポ多糖や赤血球凝集素、線毛などがあげられています。

ポルフィロモナスジンジバリスは、強い悪臭を放つ歯周病関連性菌としても知られています。また、歯槽骨を溶かしてしまう毒素も持っています。

あと、ポルフィロモナスジンジバリスのやっかいなところは、血液をエサにして増殖してしまうという点です。そのため、歯周病によって出血が見られると、さらに歯周病が進行することとなるのです。

トレポネーマデンティコーラ(Td菌)

トレポネーマデティコーラは通性嫌気性桿菌で、固有の病原因子としてプロテアーゼを有しています。レッドコンプレックスと呼ばれる3つの細菌の中で、唯一顕微鏡による確認ができる細菌となっています。

また、トレポネーマデンティコーラが、歯周病関連性菌の中でも、もっとも厄介な細菌だというドクターもいます。トレポネーマデンティコーラが繁殖してしまうと、通常の歯科治療ではなかなか治すことができないということです。

なぜかというと、トレポネーマデンティコーラは歯周ポケットが深くなるのに応じて増殖し、歯がなくなるまで住み着いてしまうからです。また、血管の中にも侵入して、さらに歯周病の進行を早めることでも知られています。

タンネレラフォーサイセンシス(Tf菌)

タンネレラフォーサイセンシスはグラム陰性嫌気性菌で、病原因子としてリポ多糖、トリプシン様プロテアーゼを持っています。歯周ポケットに生息しており、歯肉を溶かしてしまう毒素をもっています。

歯周病による全身疾患

歯周病の侮れないところは、単に口臭がしたり歯茎が腫れたりすることだけではないということです。歯周病が進行した場合、全身に悪影響を及ぼすこともあります。では、歯周病が進行することによって、どのような病気のリスクが高まるのでしょうか。

心筋梗塞

歯周病菌の病原因子が血管内に入りこむと、血液の流れに乗って心臓の冠状動脈に達します。冠状動脈に達した病原因子によってアテローム性のプラークが形成されることで、冠状動脈の動脈硬化を起こします。

その結果として、心筋梗塞や狭心症といった冠状動脈性の心疾患を起こすリスクが高くなってしまいます。歯周病に罹患している人は、そうでない人の1.15倍から1.24倍、冠状動脈性の心疾患になりやすいというデータもあります。

脳梗塞

歯周病関連性菌によるアテローム性のプラーク形成が脳内の血管で起こったり、頸動脈や心臓の血管からプラークが飛んできて脳内の血管が詰まったりすることで、脳梗塞になるリスクも高くなるということです。

糖尿病

糖尿病になると、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜症、糖尿病性の神経障害といった合併症が現れることで知られており、特にこの3つのことを、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

三大合併症以外にも、糖尿病になると末梢血管に障害を起こしたり、大血管に障害を起こしたりすることもあるということです。さらに、糖尿病になると、歯周病になるリスクも増すことが分かっています。

また、近年の研究結果によって、糖尿病によって歯周病が悪化するだけでなく、歯周病になることによって、糖尿病の症状が悪化することも分かってきています。

低体重児、早産

歯周病に罹患すると、早産や低体重児を出産するリスクが高くなることも分かっています。歯周病関連性菌が血液に乗って子宮へと至ることで子宮の攣縮が起こり、結果として早産や低体重児の生まれるリスクが上昇するのです。

最近の研究によると、歯周病を罹患している女性が早産をしたり低体重児を出産したりする可能性は、健常な女性の4.3倍にもなるといわれています。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、気管の中に入った細菌によって、肺に感染症を起こすことを言います。歯周病関連性菌が唾液とともに気管にはいることで、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高くなってしまうという訳なのです。

メタボリックシンドローム

メタボは正式にいうと「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」と呼ばれるものです。では、歯周病とメタボには何か関係があるのでしょうか。

現在のところ詳しいメカニズムは解明されていないものの、歯周病とメタボは関連性があるのではないかと注目されています。

その根拠として、歯周病関連性菌の放出する毒素によって、肝臓のインスリン抵抗性を上昇させたり、血糖値を上昇させたりすることが分かっているからです。血糖値が上昇することによって、内臓脂肪の付着するリスクも上昇するという訳なのです。

歯周病治療

ここまでの説明で、歯周病の恐ろしさについては十分に分かって頂けたのではないでしょうか。では、歯周病になってしまったら、どのような治療をおこなうこととなるのでしょうか。

SRP

SRPとは、歯周病の治療法である「スケーリング」と「ルートプレーニング」を合わせたものを指します。歯周病が進行すると、歯石が歯周ポケットの内側に付着することとなりますが、そのような歯石を特殊な器具で取り除くのが、SRPという治療法の特徴です。

定期的なクリーニング

歯周病治療は、いったん治ったら終わりというものではありません。歯周病を再発しないように、定期的にクリーニングをおこなうことが重要です。

その際には、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーング)がおすすめです。PMTCに関しては、以下の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

ブラッシング指導

歯周病を予防するためには、「正しい歯の磨き方」を学ぶことが重要です。歯科医院では、歯のプロフェッショナルである医師や歯科衛生士が、歯周病にならないためのブラッシング法を指導してくれます。

レーザー治療

レーザー治療は、歯周ポケットの中に付着してしまった歯石を取り除くのと同時に、歯周ポケット内に潜んでいる細菌を死滅させるという治療法です。

レーザーを用いることによって、SRPなどの治療法では届かない、より狭い歯周ポケット内の歯石を取り除くことがかのうとなり、また、歯周病の元となる細菌を死滅させることも同時におこなえます。

最先端の薬剤を使った治療も

歯周病に対する画期的な治療法として、最近になって「歯周内科治療」という方法が注目されています。歯周内科治療をおこなう際には、位相差顕微鏡を用いて歯周病の原因となっている細菌を特定します。そのうえで抗生物質を服用し、歯周病の原因菌を死滅させることで、歯周病を根本的に改善していきます。

歯周病治療は長い目で見て下さい

歯周病は骨折やねんざとは違い、長い年月をかけて進行していくものです。そのため、治療には一定の期間が必要となりますし、治ったらおしまいというものでもありません。歯周病治療は長い目で見ておこなうことが重要です。

歯を失うということ

歯周病が進行すると、最終的には歯を失ってしまうこととなります。では、歯を失うということにはどのような意味があるのでしょうか。

物が噛めない

歯を失ってしまうと、あたり前ですがものが噛めなくなってしまいます。入れ歯の人がよくおっしゃることとして「自分の歯でないから食べ物がおいしくない」ということがあげられます。いったん抜けてしまった永久歯は二度と生えてきません。そのため、定期的に歯科健診を受けることが重要なのです。

顔貌の変化

歯を失うと、顔貌も変化してしまいます。分かりやすいのが、入れ歯を外したときのお年寄りの顔です。歯がない部分がシワシワになっていることが分かると思います。

生活の質の低下

歯がなくなってしまうと、食事を楽しめなくなったり、笑顔を出すことができなくなったりして、生活の質=Q・O・L(クオリティ・オブ・ライフ)が低下することにもなります。

免疫力低下

歯を失ってものを噛む機会が減少すると、口内の細菌が繁殖しやすくなります。また、あごを使わなくなることによって筋力が低下し、血液の循環が滞り、結果として免疫力の低下を招く危険性もあります。

海外と日本の残存歯数の違い

予防歯科の先進国であるスウェーデンでは、80歳時点での平均残存歯数が25本もあるということです。アメリカでは17本、イギリスでは15本となっていますが、日本の場合、たったの8.8本というデータがあります。

このデータを見ても、日本人にいかに予防歯科という観念がないのかが分かります。年をとっても美味しくごはんが食べられるように、定期的に歯科健診を受けることが重要といえそうですね。

今回の記事では、歯周病がいかに恐ろしい病気であるのかについて取り上げました。正直、軽く考えていたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。将来、重大な病気にならないためにも、若いうちから歯周病対策をおこなっておくことが重要です。