差し歯ってどんなもの?治療する前に知っておいた方が良い理由は?

「差し歯って、今まで聞いたことはあったけど、いざ自分の口の中を治療されるとなると疑問がいっぱい」…そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。一口に差し歯と言っても、保険診療の範囲内でできるものもあれば、自費治療でおこなうものもあります。また、差し歯の材質もさまざまです。今回は、差し歯とはどんなものなのか、徹底解説していきたいと思います。

青山健一
この記事の監修者
南青山デンタルクリニック 院長

《経歴》
1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2016年 You矯正歯科広島駅前医院開設(7医院開院中)

『よくわかる家庭の歯学』(桐書房)
『噛み合わせを治せば肩こり、頭痛が消える!』(同文書院)
『知らなきゃ損する歯の矯正のお話』(冬青社)
など著書多数
《メッセージ》
歯科医師として、30年近く審美治療にかかわってきて、治療後に患者様の笑顔がより輝いてくることに大きな喜びを感じています。ホワイトニングや矯正治療後に、「これまでコンプレックスだった箇所が自慢の個所に変わった!」「よく笑うようになった!」など「患者さまの人生を変えることに貢献できた!」と思える瞬間が歯科医師としての一番の喜びだと思っています。
最近心に残った言葉は「幸せ」には「人から与えられる幸せ」「自分の力で何かを得る幸せ」「他人に与える幸せ」の3種類あり、「他人に与える幸せ」を知っている人が最高の幸せ者である、という言葉です。
私も人生の折り返し地点を過ぎてきましたので、これからは「他人に与える幸せ」を日々実践していきたいと考えています。
座右の銘は全ての人を尊重する、日々感謝です。
趣味は格闘技観戦、読書です。
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差し歯とはどんなもの?

手の中に差し歯が入っている写真

それでは早速ですが、差し歯とはどのようなもののことをいうのかについて見ていきましょう。どのようなときに差し歯が必要となり、またどのような構造になっているのでしょうか。

基本的には神経を処置した後差し歯になる

差し歯というと、人によっていろいろなイメージを持っていることと思いますが、実は、差し歯にはこれといった明確な定義がありません。一つ言えることがあるとするなら、虫歯や外傷などが原因で歯の大部分が失われたようなときに、人工の歯を、残っている歯の部分に被せるものだということです。

つまり、土台となる歯が完全になくなっているような場合は、差し歯をおこなうことができないということです。虫歯も、軽度なものであれば詰め物をおこなうことで治療が可能ですが、神経まで処置したような重い虫歯の場合、差し歯をかぶせることとなります。

歯が全くない場合はもちろん差し歯をすることができないのですが、残っている歯が差し歯をするには十分な長さではなかったり、割れていたり、また虫歯がひどかったりするような場合にも、差し歯をすることはできません。

実際に差し歯をするときにはさまざまな素材が用いられることとなるのですが、どのような素材があるのかに関しては、後ほど詳しく解説したいと思います。

土台と被せものからなる

差し歯というと、人工の歯を差し込むだけというようなイメージがあるかも知れませんが、実際には、差し歯は土台の部分と、そこに被せる被せ物とで構成されています。

神経を取り除くなどの処置をした歯の残っている部分に、金属でできた土台(メタルコアなどといいます)を立てて、その上に人工の歯=差し歯を被せることとなります。

最近では、金属アレルギーがある方や自費で治療を行う方のために、フィアバーコアも使われることが多いです。メリットは歯質や接着剤との馴染みも良く、柔軟性があるため歯根にダメージを表しにくいです。

かつては、歯を補強するためのメタルコアと、差し歯の部分が一緒になっているものもあったのですが、最近では見かけなくなってきているということです。

保険と自費の差し歯がある

差し歯は大きく分けて、保険診療の範囲内で施術をしてもらえるタイプのものと、自費治療でおこなうタイプのものと2つに分類されます。

特に、前歯に対して差し歯を施すような場合、保険診療で使える素材は決まっているため、ほかの歯との色の違いが目立つようなこともあります。そのような場合、素材の制限のない自費治療が選択されることもあります。

インプラントと間違えられがちだが

差し歯とよく間違われやすい治療法として、インプラントという治療法があります。インプラントは、虫歯や歯槽膿漏、外傷などが原因で歯が失われた際に、人工的に作られた歯の根っこ(人工歯根)を埋めて、その上に人工の歯冠を被せるという治療法です。

それだけ聞くと差し歯と同じように思ってしまうかもしれませんが、差し歯とインプラントとの最大の違いは、残った歯に対して土台をつくるのか、骨の中に土台を埋め込むのかという点です。

差し歯の土台はあくまでも、残っている歯に対して埋め込むのであり、インプラントのようにあごの骨に土台を埋め込むものではありません。

保険の差し歯

差し歯についてはおおよそのところが分かって頂けたことと思いますので、次に、保険診療でおこなわれるタイプの差し歯について、そのメリットやデメリット、施術費用などについて見ていきたいと思います。

硬質レジン前装冠

差し歯

前歯に対して施される差し歯としては、硬質レジン前装冠と呼ばれるものがあります。硬質レジン前装冠の中身は金属でできており、外から見える部分にのみレジン(プラスチック)が貼り付けられています。保険診療の範囲内で前歯の差し歯を作る際には、おおむねこの硬質レジン前装冠が用いられます。

メリット

前歯の差し歯として硬質レジン前装冠を用いるメリットとしては、なんと言っても保険診療の範囲内で施術をおこなうことができるため、費用を抑えられるということがあげられます。

また、中に金属が入っているため、後に紹介する硬質レジンジャケット冠よりも強度の面で優れているということです。白ければ何でもいいという人にはおすすめの素材と言えます。

デメリット

硬質レジン前装冠のデメリットとしては、変色しやすいということがあげられます。レジンとは要するにプラスチックのことなので、時間が経つにつれて変色が進み、周りの歯との色の違いが目立ってきてしまいます。

費用相場

硬質レジン前装冠の費用は、1本あたり6,000円程度のところが多いようです(健康保険3割負担の場合)。ただし、初診料や再診療、実際の治療費や型取りにかかる費用は別となっています。

硬質レジンジャケット冠

差し歯

硬質レジンジャケット冠は、硬質レジン前装冠とはことなり、金属を使っていない差し歯となっています。また、天然の歯の色に近いプラスチックと、細かく粉砕したガラスの粉が混ぜられています。

メリット

硬質レジンジャケット冠のメリットとしては、歯を白く見せられる差し歯の中で、もっとも費用を安く抑えるということがあげられます。

デメリット

硬質レジンジャケット冠のデメリットとしては、硬質レジン前装冠と比べると、中に金属が入っていないため、強度の面で劣るということがあげられます。

また、硬質レジン前装冠と同様、表面がプラスチック(レジン)でできているので、長期間にわたって使用していると、劣化したり変色したりするというデメリットもあります。

費用相場

硬質レジンジャケット冠の費用相場は、健康保険3割負担の場合で、1本当たり3,000円から5,000円程度だということです。

銀歯

4本の差し歯

銀歯は、保険診療の範囲内で奥歯の差し歯を作るときによく用いられます。かつては差し歯の素材としてよくもちいられていましたが、最近では敬遠される向きもあるようです。

メリット

銀歯のメリットとしては、強度の面で優れているということがあげられます。あたり前といえばあたり前ですが、銀歯は金属を用いて作られているので、プラスチック(レジン)で作られた差し歯よりも強度の面で勝っているのです。

デメリット

銀歯のデメリットとしては、なんと言っても見た目がまずいということがあげられます。最近、あまり銀歯が使われなくなっているのも、いつまでも白い歯でいたいという患者さんの要望が強くなってきているからです。

熱や圧により変形してしまいそこから虫歯になる二次カリエスの危険性があることもデメリットと言えます。

また、銀歯は金属を用いて作られているため、金属アレルギーを起こしてしまうかもしれないというデメリットもあります。

費用相場

銀歯を入れる際にかかる費用は、健康保険3割負担の場合で1本当たり3,000円から5,000円程度となっているようです。

2014年4月から新たに加わったハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックレジン冠はその名の通り、セラミックとレジン(プラスチック)を素材として作られた差し歯のことを言います。以前は保険が適用されませんでしたが、2014年の4月より、第一小臼歯と第二小臼歯(前からみて4・5番目の歯)と第一大臼歯と第二大臼歯(後ろの2本)に限り、CAD/CAM装置を使えば保険が適用されるようになりました。

また、2016年の保険改定によって、金属アレルギーをもっていて銀歯ができないような人に限り、やはり、CAD/CAM装置を使えば保険が適用されるようになりました。

CAD/CAM装置とは、ハイブリッドセラミックのブロックを削り出す機械で、CAD/CAM装置によって削り出された被せ物のことを、CAD/CAM冠と呼んでいます。

すべて機械によって製造することができるため、被せ物を作る費用と日数が抑えられるようになりました。それによって保険改定がおこなわれたという事情があるようです。

メリット

ハイブリッドセラミック冠のメリットは、天然の歯に近いツヤと透明感があるということです。また、プラスチック製の被せ物に比べると劣化しにくく、長期間にわたって白い歯を維持することができます。

また、本来の歯と同程度の固さであるのもハイブリッドセラミックの特徴です。そのため、食事をするときに土台となる歯にかかる負担を減らすことができるというメリットもあります。当然、保険適用がされるので、費用も安く抑えられることとなります。

デメリット

ハイブリッドセラミック冠のデメリットとしては、CAD/CAM装置を扱っている歯科医院が少ないため、誰でも気軽に受けられる施術ではないということがあげられます。

また、プラスチックの被せ物に比べればはるかに天然の歯の色に近いですが、単一の色しかないため、オールセラミックほどの色調のよさが発揮できないというデメリットもあります。

費用

ハイブリッドセラミック製の差し歯をする場合、健康保険3割負担の場合で1本当たり8,000円から9,000円程度かかるということです。

自費の差し歯

保険診療の範囲内でできる差し歯は上記の通りとなっています。では次に、自費でおこなう場合の差し歯には、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。

オールセラミック

差し歯

オールセラミック冠とは、セラミックでできたベースの部分に、さらにセラミックを焼き付けたものを指します。以前は金属のベースが多かったのですが、CAD/CAM装置の進歩により、ベースの部分もセラミックで作ることができるようになりました。

メリット

オールセラミックのメリットは、見た目がもっとも歯に近いということです。また、金属を一切使用していないので、金属アレルギーの人でも安心して用いることができます。

デメリット

オールセラミック冠のデメリットとしては、奥歯で用いるには耐久度にやや難があるという点です。そのため、基本的にオールセラミック冠は前歯に対して用いられます。

費用

オールセラミック冠の値段は治療院によってまちまち(自費治療のため)ですが、1本当たり75,000円から120,000円程度のところが多いようです。

メタルボンド

差し歯

メタルボンドは、金属でできたフレームにセラミックを焼き付けたものを指します。金属で補強されているため、奥歯に用いることが可能となっています。

メリット

メタルボンドのメリットとは、銀歯にするよりも見た目をきれいに仕上げることができるという点です。また、強度的にもオールセラミック冠よりも優れています。

デメリット

銀歯よりは審美性の面で勝るメタルボンドですが、オールセラミック冠と比べると、色調の点で劣っていることは否定できません。

費用相場

メタルボンドの費用は、1本当たり60,000円から100,000円といったところです。

ジルコニアセラミッククラウン

半分差し歯をしている口

ジルコニアセラミッククラウンは、ダイアモンドセラミッククラウンともよばれており、被せ物の土台を人工ダイアモンドであるジルコニアから削り出すという特徴があります。

メリット

ジルコニアセラミッククラウンのメリットは、金属にも劣らない強度があるという点です。また、色合いもとてもよく、審美目的の治療にふさわしいものとなっています。

デメリット

ジルコニアセラミッククラウンのデメリットとしては、非常に高価な素材を用いているため、治療費が高くなってしまうということがあげられます。

費用相場

ジルコニアセラミッククラウンの費用相場は、1本当たり100,000円から300,000円と、歯科医院やクリニックによって大きな差があります。

ゴールドクラウン(金歯)

歯と歯茎のサンプル

ゴールドクラウンとはよく言われるところの金歯です。金合金や白金合金を用いて作られた被せ物のことを指します。

メリット

ゴールドクラウンのメリットとしては、貴金属でできているために錆びにくいということがあげられます。また、柔軟性に優れているため歯への密着性が良く二次虫歯のリスクがとても低いです。

デメリット

ゴールドクラウンのデメリットとしては、やはり見た目があげられます。白い歯の中に金色の歯が見えると、人によっては嫌なイメージをもつかもしれません。

費用相場

ゴールドクラウンの費用相場も病院やクリニックによって差があり、1本当たり40,000円から100,000円程度となっています。

保険の差し歯を選ぶ時の注意点

両手でバツマークをしている女性

保険診療の範囲内でできる差し歯と、自費治療でおこなう差し歯について見てきましたが、では、保険診療の範囲内でできる差し歯を選ぶ場合、どのようなことに気をつければよいのでしょう。

劣化が早い

保険の差し歯のデメリットとして、劣化が早いということがあげられます。だいたい1年から2年ほどすると劣化するということを覚えておきましょう。

二次カリエスになる可能性が高い

二次カリエスとは、被せ物をした歯が再び虫歯になってしまうことを意味します。保険診療は使用可能な材質が限られているため、場合によっては差し歯と本来の歯との間に隙間ができ、そこから虫歯菌が侵入して虫歯を再発してしまうリスクが高いとされています。

レジンの色の変化

保険診療の範囲内でできる差し歯は費用を抑えられるものの、レジンを用いている場合には、表面の色が変化しやすいというデメリットがあります。

治療を繰り返せるのは1つの歯で4~5回まで

保険診療の範囲内でできる差し歯は、たいていの場合2~5年で劣化したり変色したりします。「じゃあまた作ればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、土台となる歯にも負担がかかるため、治療を繰り返せるのは1つの歯につき、せいぜい4回から5回までだということです。

見栄えが気になるのであれば自費の差し歯

先ほど紹介したように、差し歯治療を繰り返せるのは、1つの歯につき4、5回程度です。それならいっそ、審美効果も高くて長持ちする自費の差し歯を選択するのも1つの手です。

自費か保険かは必ず選べる

差し歯をするときには、歯科医と相談して、どのような歯にするかを決めるのが一般的です。保険の歯医者でたまに相談されず銀歯で作られてしまうことがありますが、必ず選ぶことはできますので医師に相談しましょう。

自費の差し歯を選ぶポイント

チェックを書いている写真

保険診療の範囲内で差し歯をする場合、以上のような注意点があります。では、自費治療で差し歯をする場合、どんな所に気をつけるとよいのでしょう。

保証の期間や条件などを確認

自費治療で差し歯をおこなう場合は、納得がいくまで担当の歯科医と話しをするようにしましょう。病院やクリニックによって、保証の期間や条件が異なるので、複数の歯科医院を比較するとよいでしょう。

自費の差し歯の場合はカウンセリングを何店舗がうける

歯科医院はコンビニの数よりも多く、サービス競争も激化しています。無料のカウンセリングをおこなっているところもあるので、自費の差し歯希望する場合には利用するとよいでしょう。

症例実績の確認

自費治療で差し歯をする場合は、どれほどの症例や実績があるのかも確認しておきましょう。CAD/CAM装置を使うような場合はともかく、被せ物の製造や実際の施術は、担当者によって力量の差が出るものですから。

ホワイトニングしてからがおすすめ

自費治療で差し歯をする場合、あらかじめホワイトニングをしておくのがおススメです。その方が、審美目的の差し歯をよりきれいに見せられることとなります。ホワイトニングについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

長い目で考えれば自費の差し歯がおすすめ

OK合図をしている女性

保険診療の範囲内でおこなえる差し歯と、自費治療でおこなう差し歯について見てきましたが、長い目で見た場合、自費治療で差し歯治療をおこなった方が、見た目もよくて長持ちすると言えそうですね。

差し歯について徹底解説してきましたが、いかがだったでしょうか。イメージしていたのと違ったという方もいらっしゃるかもしれません。最近では虫歯治療のついでに、審美目的で自費の差し歯を選択する人も増えています。差し歯を検討している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてくださいね。